ムチカラマツに産卵準備中のヤマブキスズメダイ(コモド)
繁殖期は日本では夏だが、熱帯域では通年産卵している。産卵する場所はムチカラマツが最も多い。ムチカラマツとは刺胞動物で、細い枝のような形をしていて2m以上になるものもある。
さまざまな生物に産み付ける
その他にはウミカラマツの仲間(上左)やオオイソバナ(上右)、ヤギの仲間(下左右)など必ず生物を産卵に利用している。理由としては、こうした生物が生息している所は潮の流れがあるので、卵に好都合なのだろう。ただ、これらの生物の生きている部分にはポリプがあるため、卵は産み付けられない。表面をはみ取る必要がある。
卵は沈船の鉄の部分に産み付けてある(アンダマン海)
たった一度だけヤマブキスズメダイが、生物ではなくて人工物に産み付けた卵を守っている場面に遭遇したことがある。アンダマン海で潜っていたときで、沈船の鉄の部分に卵があった。生物以外に産み付けていたのはこれが最初で最後。
変わり果てたエダムチヤギ(伊江島)
1年半後、同じ場所で同じエダムチヤギを探した。卵が付いていてヤマブキスズメダイもいた。だが、場所が少し違う気がする。しばらくして別のものだとわかった。以前のものは枝が2本しか残っていなかったので、まったく気づかなかったのだ。残った2本には卵が付いていたが、他は枯れてなくなっている。
皆そうだが、他の命をいただいて生きながらえる。