大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ガラスハゼの生態

 ハゼ科のガラスハゼは全長約3cmで、房総半島以南の太平洋、インド洋に分布している。住みかは刺胞動物のムチカラマツで、生涯そこで過ごす。ムチカラマツとは直径約1cm、長さ2~3mある1本の枝状で、海底から上方に伸びている、表面には触手が密集し、プランクトンを捕食している。ガラスハゼはペアでいることが多い。 

ムチカラマツにペアで暮らすガラスハゼ(座間味) 

 

ガラスハゼが新種記載されたのは1969年で、日本では80年代初めごろに生息確認され、和名が付けられた。体の一部が透明であることが由来と思われる。 

シルエットのガラスハゼ(座間味)

 

ガラスハゼは肉食性だが、何を食べているかは図鑑などに記されていない。おそらく、浮遊している甲殻類の幼生が近くを通ったり、ムチカラマツにたどり着いたら食べるに違いない。実際に食べている場面を見たことはあるが、何なのかはわからなかった。 

卵を守りながら何かを食べるガラスハゼ(奄美 

 

繁殖期は初夏から夏で、期間中に何度か産卵を繰り返すものと思われる。6月奄美で求愛らしい行動を観察した。オスと思われる個体がもう1尾の上に重なるしぐさを何度も行ったのだ。産卵を促す行動なのだろうが、3分間観察・撮影しても進展はなかった。 

重なる不思議な行動(奄美 

 

産卵は、ムチカラマツの触手や肉質部をはぎ取って骨格だけにし、産み付ける。その後はオスがふ化まで卵を守る。骨格だけになったムチカラマツは、回復は望めない。海の中でも、生きものが生きてゆくには、いくつかの命が犠牲になる。これが自然の摂理というものなのだろう。 

産卵中のペア(座間味)