大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

初観察・クジラとエイの繁殖生態

11/24配信のナショナルジオグラフィックメールマガジンに、素晴らしい記事が二つ載っていた。一つは、ザトウクジラの出産が初観察されたという記事。202135日にハワイのラハイナ沖で研究者とナショジオの撮影隊が15時すぎにザトウクジラの群れを発見。撮影隊が潜ると、メスクジラから赤ちゃんの尾ビレが出ていた。周りにはオスクジラが集まり、泡を吹きだしながらスクリーン状にし、囲むようにしたという。状態は変わらないまま日没になったため、撮影隊はボートに戻ってドローンを飛ばした。

母クジラから尾ビレが。そばに泡を出すオスクジラ(ナショジオのメルマガより)

 

ドローンを戻して映像を確認すると、出産したことが確認できた。

産まれた赤ちゃんクジラが水面に(ナショジオのメルマガより)

 

すぐさま撮影隊が入って撮影を続けたという。出産の瞬間は映像になかったものの、すごい場面を撮ったものだ。

母クジラと産まれたばかりの子クジラの姿(ナショジオのメルマガより)

 

もう一つは、ムンクイトマキエイの「求愛の渦」。年月の記述はなかったが、メキシコのコルテス海(カリフォルニア湾)で、保護活動NPO「マンタトラスト」が実施した調査で、122匹のムンクイトマキエイが渦を巻くようにしていたところを撮影。交尾相手を求めての行動で、「求愛の渦」と名付け、11/18付で学術誌「Marine Biology」に論文を発表したという。

ドローンでの画像で、ムンクイトマキエイの大群(ナショジオのメルマガより)

 

ムンクイトマキエイは日本に分布しないため、この名は標準和名ではなく仮称。ナンヨウマンタやオニイトマキエイなどより小さく、コルテス海では大群で出現したり、水面をジャンプすることが知られていた。今回の調査で、「求愛の渦」を巻きながらオスがメスに飛び乗って交尾することが判明したという。

今後はさまざまなデータを解析し、調査・撮影機材のさらなる進歩で、ますます海中生物の生態が解明されることだろう。大いに期待したい。

「求愛の渦」のムンクイトマキエイ(ナショジオのメルマガより)