大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

高水温は苦手・ウマヅラハギ

カワハギ科のウマヅラハギは北海道~九州、朝鮮半島、中国沿岸、台湾、ベトナムマラッカ海峡に分布。全長約30cmになる。明るい灰色と薄茶が混じったような体色で、不規則な暗色模様が現れることもある。カワハギと似ているが、体型は本種のほうが細長い。生活スタイルも異なり、カワハギが単独で行動するのに対し、本種は単独~10数尾で行動することが多い。

群れで行動するウマヅラハギ(佐渡

 

カワハギの行動域は沿岸の海底付近なのだが、本種はやや沖合の深めのところだ。したがって、伊豆半島ではあまり出会った覚えがない。おそらく低水温を好むためだろう。

以前の図鑑では本種の生態に関する記述はなかったが、その後調査・研究が進んだようで、最近の図鑑には詳しく載っている。

エサを探すウマヅラハギ(佐渡

 

それによると、繁殖期の47月になると沿岸の浅場へ移動し、ペアになってホンダワラなどに産卵する。メスは翌日も産卵可能で、数日にわたって繰り返し産卵。受精卵は約2日でふ化し、稚魚は流れ藻などについて約1年過ごす。5cmくらいになると、水深60mより深い岩礁に移行してしばらく過ごすらしい。深みである程度成長すると、生活の場を少しずつ浅場に移すようだ。

求愛と思われる行動のウマヅラハギのペア(佐渡

 

カワハギとウマヅラハギの食材としての価値を比べると、カワハギに軍配が上がる。味もさることながら、漁獲量もあるようだ。本種は群れで行動することもあるため、大量に捕れるので価値が下がってしまうのだろう。

ハタタテダイ幼魚にクリーニング差荒れるウマヅラハギ(大瀬崎)

 

今後地球温暖化が進んで水温が上がると、低水温を好むウマヅラハギはますます深いところに生活圏を移し、ダイビングで出会えなくなってしまうに違いない。

今後見られなくなるかもしれないウマヅラハギ(済州島