大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ホシススキベラの生態

ベラ科ススキベラ属のホシススキベラは、全長約16cmになり、和歌山県以南の中・西部太平洋、インド洋に分布している。生息数はさほど多くないうえ、成魚は比較的地味なので人気はあまりない。しかし幼魚のある時期はとてもきれいになり、観賞魚として珍重される。

4cmのホシススキベラの幼魚(奄美

 

座間味や奄美で本種のオスが婚姻色になって勢いよく泳ぐ姿を何度か見たが、なぜか冬が多い。繁殖期は夏と思われるのだが、もしかしたら1年中なのかもしれない。

婚姻色で疾走するオス(座間味、1月)

 

時折、体色がやや異なるホシススキベラを見ることがある。体の後部が明るいのだ。研究者の話では、同属のニューギニアベラと本種の交雑個体が数個体発見されているので、その可能性が高いとのこと。

ホシススキベラとニューギニアベラの雑種と思われる個体(奄美

 

確かに日本ではどちらも生息数は少ない。そのため同種の繁殖相手が見つからず、近縁ということもあって、繁殖相手に選んでしまうのかもしれない。

左はホシススキベラのオス(奄美)、右はニューギニアベラのオス(沖縄島)

 

雑種と思われるオスが、ホシススキベラのメスに求愛していた。本来、雑種は繁殖能力はないといわれているので、無駄な行動といえるのかもしれない。だが、まったく無意味というワケでもない。なぜなら、遠い昔に出現した魚類が次第に種を増やしてきたのは、無駄な行動の中から突然変異が生じて新たな種の誕生、ということが繰り返されてきたからにほかならない。願いはいつか叶うのだろう。

ホシススキベラのメスに求愛する雑種のオス(奄美