ベラ科のクラカケベラは、高知県以南の西部太平洋に分布している。サンゴ礁外縁のやや深いガレ場を行動域にしているが、生息数はそう多くない。体側に黒と白の独特な模様があり、容易に識別できる。全長約18cmになる。
独特な模様のクラカケベラ(奄美)
幼魚も成魚とほぼ同じ生息環境で見られる。ただ体側の模様は薄く、動きも活発ではないため、あまり目立たない。
約3cmの幼魚。細長い魚はニシキオオメワラスボ(奄美)
はっきりした独特な模様なのだが、感情の変化で薄くすることがある。危険を察知すると周囲の環境に溶け込み、難を逃れるためだろう。
模様を薄くした個体(座間味)
インドネシアのコモド諸島南エリアでも、クラカケベラと出会えることがある。ただし20cm以上もあり、体色も赤っぽい。模様からしてクラカケベラに間違いないはずなのだが、どうしてこんなに色合いや大きさが違うのだろうか。
赤味が強くて大きなクラカケベラ(コモド)
以前、奄美で夕方に潜っているとき、本種が貝殻やサンゴのガレキなどをくわえて一定の場所に運んでいた。深い場所だったため、観察が続けられなかったが、今考えると寝床を作っていたのかもしれない。というのは、同じベラ科のオビテンスモドキは石などを運んで寝床を作り、そこに潜り込んで寝るからだ。それにしてもクラカケベラは、謎に満ちていて興味尽きない魚だ。
ガレキを運ぶクラカケベラ(奄美)