大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

英名はレインボウランナー

アジ科のツムブリは全長約1mになり、南日本を含む全世界の温帯・熱帯域に分布している。体型は細長くてスマート。したがって、スピードも速く、来たと思ったらすぐに去ってしまう。体側に水色と淡い黄色の帯があり、他のアジ類とはひと目で区別がつく。こうした特徴から、英名はレインボウランナーとなっている。

素早く泳ぐのに適した体型のツムブリ(座間維)

 

とはいえ、ツムブリを美しく撮るのは難しい。色が出ないのだ。銀色ではないのに、なぜかハレーションを起こしてしまったり、淡い黄色が出なかったり…。

ストロボでハレーションを起こしやすい(座間味)

 

群れでやって来たツムブリの中から、23尾が離れて何かを探すことがある。ホンソメワケベラのクリーニングステーションで掃除をしてもらうのだ。やがてホンソメワケベラがクリーニングを始め、ツムブリは気持よさそうに身を任せる。

ホンソメワケベラからクリーニングを受ける(座間味)

 

あるときコモド諸島のシーマウント(沖合にある根)で潜っていると、ツムブリの群れが来た。通常より密集していて、海底近くを移動する。しかもゆっくりと。何かに怯えているようにも見える。遠くにはロウニンアジがいるだけ。いくら何でもロウニンアジは敵ではないはず。

海底近くに密集するツムブリ(コモド)

 

このときから20日後、再び同じポイントに潜る機会があった。ツムブリはいたが、数は少ない。多くは他の場所に移動したのだろうが、残っていたツムブリの体には生々しい傷があった。サメなどの天敵に襲われたものの、命拾いしたのだろう。例え速く泳げたとしても、弱肉強食の世界では常に危険と隣り合わせなのだ。

傷がある個体が(コモド)