ヨウジウオ科イシヨウジ属は、日本に4種分布している。イシヨウジ、クチナガイシヨウジ、オビイシヨウジ、キシマイシヨウジだ。いずれも全長は12cm前後で、サンゴや岩の上を這うように移動する。4種の中で日本初記録が最も遅いのがキシマイシヨウジで、80年代初めごろだ。新種記載は1883年なので、100年後ということになる。他種と混同されていたためと思われる。
イシヨウジのペア(柏島)
ダイバーのバイブルと称される図鑑『日本の海水魚』(山と渓谷社)。97年発刊だが、その約2年前に写真担当者の一人だったことから、リストに合わせてたくさんの写真を貸した。その中でイシヨウジと思って貸したのがこの写真だ。ところが、完成した図鑑にはキシマイシヨウジとして載っていた。
図鑑に初めて使われたキシマイシヨウジ(座間味)
本種は、84年に発刊された『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)に初めて掲載されたが、写真がなかったからか、外国人学者のモノクロ写真が載り、新称として「キシマイシヨウジ」と付けられていた。最初図鑑に載った写真がモノクロだったこともあってわかりにくく、ダイバーなどに浸透しなかったようだ。
サンゴの上を移動するキシマイシヨウジ(座間味)
イシヨウジ属の体色・斑紋は個体によって変異が多いため、外見で判別するのは難しい。本種も例外ではないが、大きな特徴は和名にもなった黄色い斑紋があることだ。ほとんど図鑑に載っていないため知名度も低い。なんとか多くのダイバーに知ってもらいたいものだ。
黄色い斑紋が特徴のキシマイシヨウジ(座間味)