大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

影響を受けた50年前の写真集

大切にしている水中写真集がある。50年前に洋書店で入手した『Geheimnisreiche Meerestiefen』だ。1971年ドイツで出版されたもので、撮影はダグラス・フォークナー、解説はラベット・スミス。実は70年にアメリカで出版されていたらしいが、洋書店にはドイツ版しかなかった。タイトルを直訳すると「不思議な海の水深」だった。タイトルはともかく、内容は素晴らしかった。

写真集と著者。上が写真家のダグラス・フォークナー

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巻末には作品の撮影場所やデータが掲載されていて、パラオニューカレドニアで撮影されたものわりあい多い。カメラはおそらくローライマリンだろう。最も気に入ったのは、コブシメが交接している写真だ。よくこんな絶好のチャンスを逃さずに撮ったものだと感心した。

ニューカレドニアで撮影されたコブシメの交接

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当時ぼくはニコノス28mmレンズと、6×6版のブロニカを使っていたが、魚や生物に寄るのは難しく、この写真集のような写真を撮るのは夢だった。カメラのせいにするのはよくないのだが、ローライマリンだから撮れるのだと思うようになった。

生態写真も載っていて刺激された

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この写真集を見て、生物を丁寧にわかりやすく撮っていることに感心し、常にこのような姿勢で撮るのが望ましい、と思い、そのようにしてきたつもりだ。そのような意味で、この写真集は原点といえる。

後に自分もローライマリンを手にして撮影することになったが、少しずつダグラス・フォークナーに近づいた気がした。やはり「道具」というのは、気持ちを上向きにすることもあるので大切なのだ。

現在でも評価される写真が多く載っている

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日本の和歌山県でも撮影を行っている。クラゲやウミウシ、タコの写真だ。このころから日本の海洋生物は世界で注目されていたのだろう。日本で撮影された写真が掲載されている点も、この写真集に愛着がわいたのかもしれない。

和歌山県で撮影されたもの

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