大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

補欠選挙を考える

東京都第15区(江東区)の衆議院議員補欠選挙4/28投票される。今回は自民党の法務副大臣だった柿沢未途議員が、昨年の江東区長選挙にて公職選挙法違反で有罪判決を受けて辞任したため。

衆議院柿沢議員のポスター。事件発覚後半年すぎても貼ってあった

 

それに伴い、9名の立候補者がニュースなどで紹介された。その中に見覚えのある顔が。調べたら、汚職事件のニュースでたびたび見た秋元司だった。内閣府副大臣だった秋元は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で収賄などの罪に問われ、1912月懲役4年の実刑判決、2審も同じ判決だった。秋元被告は一貫して無罪を主張し、上告している。検察のでっち上げ、えん罪だとも言っている。真相はわからないが、これまでの捜査や証拠などでこのような判決が出たのだろうし、当時安倍政権だったので、検察がでっち上げをするなど考えにくい。

立候補者9名の掲示

 

 

まず驚いたのは、実刑判決を受けた人物でも無罪を主張すれば立候補できるというルールだ。公職選挙法の規定で、有罪判決が確定しない限りは立候補できるらしい。こんなことはおかしいし、えん罪が前提になっている。なぜなら、当選しても有罪が確定すれば失職するからだ。そうすれば、また補欠選挙をしなければならない。当然選挙にはお金がかかる。一般市民からすれば、補欠選挙にかかる費用は不祥事を起こした議員が全額支払うべきだと思うが、たぶん税金なのだろう。法律は国会議員がつくったり改正するので、自分がそうなった場合を考慮して、ゆるい法律になっていると想像できる。

立候補を表明する秋元司(朝日新聞デジタル版より)

 

 

1990年 熱き時代

レトロブームのようだ。好景気に沸いたバブル時代の映像がテレビでよく流れている。確かに80年代後半は景気がよかった。バブルという言葉も、はじけて言われたように思う。80年代後半は「マリリンに逢いたい」「グラン・ブルー」「彼女が水着に着替えたら」などダイビング関連の映画がヒットしてブーム(?)になり、一般企業もダイビング事業に参入した。ブリヂストン、日産、NTT、西武、ヤマハ、丸井などで、その後ほとんど撤退したが、ブリヂストンはビーイズムとして独立した。また、大京観光や日新製糖などは70年代前半からダイビング事業を始めている。

1981年、サラリーマンからフリーの水中写真家になったぼくは、80年代後半からようやく食べられるようになった。好きなことを仕事にし、世間に認められ始めたのがうれしかった。

日航機内誌「ウインズ」(903月号)の ”地球絵はがき“で陸上の写真を掲載

 

そこで、最も熱かった1990年を振り返ってみたい。写真家は、写真展を開催し、写真集を出版して一人前と認められる、が定説。そうしたことで、2年前から写真展の準備をして、903月に新宿ニコンサロンで「素顔の魚たち」を開催した。これがきっかけという訳ではないが、この時期いろいろな仕事が舞い込んだ。

初めての写真展「素顔の魚たち」の案内状

 

日航の機内誌「ウィンズ」で “海に潜る” 特集をするので、全面的に協力してほしいとのこと。もちろんOKして海外ロケをした。ほぼ同時期に南西航空の機内誌「Coralway」も “海特集” をしたいというので、写真をたくさん貸した。

日航の機内誌と南西航空の機内誌

 

自身の本を出版するため、やはり1年前から作業を進めていて、5月に出すことができた。「大方洋二のダイビングガイド」(山海堂)で、フォトエッセイだ。この年さらに「海の環境別観賞魚図鑑」「サンゴ礁の華」(共に新星図書出版)を出した。ちなみに、翌年写真集「Marine Blue」(山海堂)を出版した。

「大方洋二のダイビングガイド」とその出版記念パーティー、「海の観賞魚図鑑」

 

また、ニコンサロンで開催した写真展を、調布パルコでも8月に開催が決まった。

さまざまな出版社もダイビング関連の本を出すようになり、それに伴いロケを依頼されることも増えた。伊豆半島をロケした「リゾートダイビング」(双葉社)、沖縄諸島を取材した「ダイビングハンドブック」(双葉社)、「日本縦断ダイビングスポット」(山海堂)など。

各出版社のダイビング関連書籍

 

航空会社も沖縄のパックツアーにダイビングを追加するようになり、日航のパンフレットに水中写真を貸していた。全日空では、ダイビングツアーそのものを会社で行う方針となり、広告代理店を通して撮影の依頼がきた。モデルが万座ビーチホテルで講習を受け、座間味島でファンダイビングをするというストーリーで、1週間のロケ。陸上・半水面・水中の3パターン撮影があるので、かなり大がかりだった。集客が多ければ翌年もパンフレットを作成する予定だったが、1シーズンで終了した。

航空会社のダイビングツアー用パンフレット

 

その他にも雑誌の連載やフォトセミナー、トークショーなども数多く行った。また、SWAL(南西航空)とJALは、ダイバーズアイランドキャンペーンを計画し、沖縄ツアーに「フィッシュウォッチングシール」をプレゼントするサービスを行うことに。それに伴い、魚の写真を貸すことになった。

1990年の年収は、サラリーマン時代のそれをちょっと超した。当時の連絡手段は固定電話、FAX、郵便だけだったが、それでも何とかやってこられてた。忙しいのはありがたいことだが、自分の写真を撮る時間が極端に減少した。やはり何ごともほどほどがいいと感じた。こうして、ぼくの熱き時代はほどよく冷めて行った。

ダイバーズアイランドキャンペーンのフィッシュウォッチングシール

 

第39回水中映像祭を見て

4/14(日)江東区文化センターに於いて、水中映像サークル主催の水中映像祭が開催された。今回上映されたのは、次の6作品。「あの日あの時」松村英典、「バリ島2023」岡野和之、「水中映像サークル会員の撮影機材」合同作品、「冬の大瀬崎」林保男、「SLOW MOTION」横山和男、「水中ナイトビジョン~夜の水中で赤外線撮影してみた!~」梅野朝年。

39回水中映像祭の案内状と上映前の会場

 

今までなかった題材だったのが合同作品で、会員が使用している撮影機材の紹介だ。さまざまな機材が発売されたり、機能も格段に進歩していて驚かされた。ただ、ライトや他の付属品をたくさん付けることによって大きくなり、機動性や魚類への接近度が心配になった。

「冬の大瀬崎」は動画で、丁寧に撮っていると感じた。深海性のソデイカや珍しい幼魚などに心を奪われた。

岸辺に打ち上がっていたが、深みに戻るソデイカ

 

最後の2作品は、新たな試みをしたもので、表現方法に新風を吹き込むかもしれない。

SLOW MOTION」は通常に撮影した動画を編集ソフトで全編スローモーションにした作品。全体的に映像はきれいだったが、スローの効果がわかりにくいものが多いと思った。すごい速さで動くのでわかりにくい生きものの行動を、スローにして見せるという被写体選びが大切だろう。ミノカサゴも出てきたが、ふだんもゆっくりなので、スローにする意味がないと思った。

SLOW MOTION」のタイトル

 

「水中ナイトビジョン…」は動画で、赤外線の特徴や撮影機材の説明も入れ、生物に感じない赤外線ライトを当てて撮影。確かに通常のライトを当ててパワハラまがいの撮影に比べればやさしいことは間違いないが、モノクロになってしまうのが惜しいところ。本当に貴重な生きものを狙えば、赤外線撮影も活きるのではないだろうか。こうした新しい試みに挑戦することは素晴らしいので、今後もチャレンジしてほしい。

最後に感想を求められたが、意見がまとまらないまま話してしまった。それにしても参加者が少なかったので驚いた。こうしたことに関心を持つ人が少ないのはとても残念に思う。Zoomによる参加も可能にしたということだが、遠方ならともかく、近くなら実際にスクリーンで見てほしいものだ。

「水中ナイトビジョン…」のタイトル

 

ヒメウツボの謎

ウツボ科のヒメウツボは全長約25cmになり、八丈島以南の太平洋、インド洋に分布している。1953マーシャル諸島ビキニ環礁で得られた標本を基に新種記載された。日本では90年代に伊豆諸島や沖縄で撮影された写真がダイビング雑誌に載り、英名のゴールデン・モレイと呼ばれていた。

小型種のヒメウツボ柏島

 

1998年に八丈島から得られた標本を基に日本初記録として『伊豆海洋公園通信』で発表。新称ヒメウツボが提唱された。したがって、97年初版の『日本の海水魚』(山と渓谷社)には載っていない。

図鑑に載ったのは最近のヒメウツボ奄美

 

ヒメウツボは生息数が少ないうえ、警戒心も強いために出会える機会はとても少ない。これまで出会った海を振り返ってみると、座間味、奄美柏島3か所だけだ。体色は黄色か茶色だが、黄色が多いようだ。体色はもともと2パターンあるのか、それとも変化できるのかわかっていない。薄い茶色の個体を見たことがあるので、変えられるという可能性もある。

薄い茶色の個体(柏島

 

警戒心が強いと思っていたにもかかわらず、目の前で岩のすき間から出てきたことがある。もちろん個体によって性格は異なるのかもしてないが、このときはビックリした。

全身を出した茶色の個体(座間味)

 

ヒメウツボは決まって単独でいる。同じ海域で別個体も見たことはない。ではどのようにして異性を見つけ、繁殖するのだろうか。実に謎が多いウツボだ。

謎多きヒメウツボ奄美

 

東京スカイツリー物語 

NHK総合テレビで「新プロジェクトX ~挑戦者たち~」が始まった。第1回目(4/6)は「東京スカイツリー 天空の大工事~世界一の電波塔に挑む~」。世界一高い電波塔建設に挑む人たちの物語だ。とても感慨深く、そして懐かしく思いながら見た。というのも、以前はスカイツリーが見えるところに住んでおり、徐々に伸びてゆく姿をいつも見たり撮影していたからだ。

新プロジェクトX のタイトル

 

そもそも新たな電波塔が必要になったのは、東京タワーの周囲に高いビルが建ったため、電波が遮られるようになったからだ。そこで2倍の高さの塔を計画するが、予定地は東武鉄道北十間川の間の狭い場所。設計を工夫するしかない。前代未聞のプロジェクトが始まった。五重塔に使用されている心柱を入れて地震対策をしたり、土台は三角形ながら、上に行くに従って丸くなるという設計を取り入れた。

予定地の俯瞰図。楕円が東京スカイツリーの施工範囲

 

着工が始まったのは2008年秋で、当初は土台の部分はフェンスに隠れていたため、何をしているかわからない状態で、近所の人が散歩ついでに見た、という感じだった。

着工が始まった(200811月)

 

工事が進み、徐々に高くなるにつれて、強風や雷などが脅威になり、幾度となく作業は中断したようだ。とはいえ、遠くからでも見える高さになると、報道もされるようになり、見物する人も次第に多くなった。

心柱の部分が公開(20103月) 下、だいぶ高くなった(20105月、駒形橋より)

 

2011311日、東日本大震災が発生するが、スカイツリー完成間近のことだった。そのとき関係者たちは、最上階で3000トンもあるゲイン塔(電波を送受信する要)の吊り上げ作業中。突然横に5mの揺れに見舞われ、塔が倒れて死ぬんだ、と思ったと、関係者の一人は語った。

偶然にもこの日の午前、ぼくは確定申告書の提出でスカイツリー近くの本所税務署へ行き、帰りは浅草通りを歩いた。通りは行列のようになっていたので、スカイツリー効果と思って写真を撮った。

浅草通りを行く人々(2011311日)

 

東日本大震災から1週間後、東京スカイツリーの塔自体は完成した。建設にかかわった人は述べ58万人だという。あとはすみだ水族館ソラマチなどの関連施設および周囲の整備などの工事、スカイツリーのライティングテストを行い、2012522日に開業した。実は、同年56日に隅田川で「東京ホタル」というイベントがあり、LEDライトを点けた「ホタル」を流した。そのとき開業前にもかかわらず、スカイツリーのライティングが点灯。粋な計らいに大勢の人が感激したのを覚えている。

番組の最後に流れたテロップを見て驚いた。撮影の名が知り合いのKさんだったからだ。正確にはこの後知り合いになった。20126月の奄美ロケで、「潜水班」のKさんと初めて会ったのだから…。

東京ホタルの様子(201256日、駒形橋より)

 

 

マリンダイビングフェア2024

4/5(金)より池袋サンシャインに於いて、マリンダイビングフェア2024が開催された。主催会社が代わって3回目で、コロナも収まったこともあり、出展社も入場者もだいぶ増えていた。ただ、海外のダイビングサービスがまだそこまで余裕はないようで、以前より少なかった。

マリンダイビングフェア受付

 

今回の入場者に配付された「Marine Diving」。マリンダイビングフェア2024ガイドとして会場案内やステージプログラムなどの他に、海外や国内のダイビングエリアの紹介や、最新のダイビング器材、水中カメラなどの広告が掲載され、ダイビング雑誌を彷彿させる内容だ。

無料で配布された「Marine Diving

 

水中撮影機材もかなり進歩していた。ソニー用のこのハウジングは、通常のズームレンズに特製ワイコンを付けてドームポートをかぶせると、収差もない超ワイド写真になると説明を受けた。確かにすごいが、値段も90万円とすごかった。

最新で高価なハウジング

 

このようなイベントを多くのダイバーが待ちわびていたようで、平日にもかかわらず、だいぶにぎわっていた。そのお陰もあって、およそ30名のダイバーと挨拶や話しができた。

にぎわう会場

 

ガイド会の写真展も行われていた。どれも素晴らしかったが、生態的にもよいと思ったのが、鹿児島のダイビングショップ SBの松田康司氏が撮影した、ワカウツボの産卵上昇だ。メスの腹部がかなり膨れており、産卵直前の腹部の様子がよくわかった。

マリンダイビングフェアは4/7(日)まで行われる。

松田氏撮影のワカウツボの産卵上昇の写真

 

シルエット写真の魅力 

影絵のようなシルエット写真は、見た瞬間心に残る。インパクトがあるからだ。色や質感は省略しているため、生物写真としては向かないが、普通の写真の中に1点入ると、かなり存在感を増す。水中写真の場合、海底から水面方向にカメラを向け、逆光状態で生物などを入れて撮れば、簡単にシルエット写真になる。もちろん照明は当てない。

ハナヤサイサンゴの仲間(コモド)

 

シルエット写真を撮るうえで注意したい点は、形がおもしろいものや複雑なものを選ぶこと。魚の場合は輪郭でわかるものが望ましい。ミノカサゴ、マンタ、アカモンガラなどが向いているが、向きにも注意が必要だ。

ツバメウオ(座間味)

 

座間味のサクバル漁礁というポイントで、コンクリートブロックに付着したサンゴがかなり大きくなっていた。比較的成長が速いミドリイシの仲間だ。確かな年数は不明だが、10数年は経っているだろう。ストロボを当てて普通に撮ったのが下の小さな写真。それを真下から撮ってみた。

ミドリイシの仲間(座間味)

 

風景の中に主役の魚を配し、シルエットで撮ってみた。通常は照明を当てて撮ることがほとんどなので、一風変わった写真になった。

ウミシダとヤシャベラ(奄美

 

海底断崖から枝状サンゴが伸びていた。小魚が隠れ場所として利用している。シルエットで狙っていたら、ダイバーが通った。サンゴだけなら造形、アート系の写真になるが、人物や小魚が入ることによって「生活」「文化」「温もり」などの要素が加味される写真になるから不思議だ。

枝状サンゴとダイバー(ラジャアンパット)