大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

青筋と金剛

柏島のお魚セミナーで、鹿児島大学大学院生の吉田朋弘氏はテンジクダイ科魚類について講演した。その中で特に興味深かったのがアオスジテンジクダイの近似種。以前からフィッシュウォッチャーの間では、尾柄部の黒帯がアオスジテンジクダイと異なるので、別種ではないかと噂されていたようだ。


上がコンゴウテンジクダイ                                             

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吉田氏は'06年から8年間にわたり鹿児島県各地を調査・採集し、日本初記録として'158月に鹿児島大学総合研究博物館の本村浩之教授と共同で論文を発表し、標準和名コンゴウテンジクダイを提唱した。左がコンゴウテンジクダイとアオスジテンジクダイの標本写真で、鹿児島大学総合研究博物館より提供していただいた。









群がるアオスジテンジクダイ(GBR
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実はコンゴウテンジクダイについては、勉強不足で知らなかった。アオスジテンジクダイとの大きな違いは尾柄部の黒班。アオスジテンジクダイは帯だが、コンゴウテンジクダイのそれは樽型で輪郭はぼやけている。これまで撮った写真にコンゴウテンジクダイがあったなら、そうした違いに気づかずにいた自分に情けなくなる。複雑な心境で調べたが、運よく(?)みんなアオスジテンジクダイだった。





『えひめの愛南お魚図鑑』より

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コンゴウテンジクダイの分布は鹿児島県(薩摩半島大隅半島竹島屋久島)、愛媛県室手。'10年発行の『えひめの愛南お魚図鑑』(愛媛県愛南町)には、整理前なので混同されたままアオスジテンジクダイとして載っている。





『フィッシュマガジン』'788月号より
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コンゴウテンジクダイには出会っていないが、アオスジテンジクダイには思い出がある。'78年に真鶴で撮影したことがあるのだ。当時アマチュアだったが、観賞魚雑誌『フィッシュマガジン』に連載していたので、載せたことがある。'75年発刊の『魚類図鑑~南日本の沿岸魚~』(東海大学出版会)には、'74年に日本初記録になり、日本では三宅島のみに分布と書かれていた。そんな訳で、興奮しながらローライマリンで撮影したのを今でも覚えている。