先日柏島で開催されたウミノフォトフェスのお魚セミナーで、高知大学の遠藤広光氏は柏島にまつわる魚類について講演した。トサヤッコやスジハナダイ、カシワハナダイ、イトヒキハナダイなど柏島やその周辺で発見されて新種記載や日本初記録になった魚たちだ。
本場のカシワハナダイ(上)(柏島)
昔から研究者が入っているからだろう。柏島周辺で見つかった魚は実に多い。その中で地名が冠せられたカシワハナダイを取り上げてみよう。
沖縄などではカシワハナダイの生息場所は根だが、柏島では転石帯や岩場。時にはケラマハナダイなどと一緒にいる。
カシワハナダイのオス(慶良間)
カシワハナダイは1918年に柏島から得られた個体を基に田中茂穂博士により新種記載され、種小名kashiwaeが付けられた。その後、既存種と同種であることが判明。こうしたことをシノニム(同種異名)といい、先に付けられている学名が優先される。したがってkashiwaeは消滅。'87年発刊の『世界の海水魚』(山と渓谷社)はkashiwaeで、'94年の『日本産魚類生態大図鑑』(東海大学出版会)はcooperiに変わっている。
昼間の婚姻色(慶良間)
カシワハナダイのオスはよく体色を変える。メスに求愛するときは、淡いピンク色になり、肉眼では輝いて見える。
夕方の婚姻色(奄美)
淡いピンクになるのは婚姻色だが、いわば昼間の色。夕方産卵直前の求愛のときの婚姻色は別の色になる。
珍しいクリーニングシーン(慶良間)
カシワハナダイがクリーニングされている場面に遭遇するのはあまりない。動き回っていることが多いからだが、海底でじっとしているので近寄ったら、アカシマシラヒゲエビに口をきれいにしてもらっていた。