大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

魚類の生態用語(その2)「フラッシング」

魚類の行動研究から生まれた用語もある。フラッシングは、海洋学者の故ジャック・モイヤー氏が'79年に初めて使用した。縄張りオスが行う急激な体色変化のことで、メスに対しては優位や求愛を意味し、オスに対しては威嚇を意味する。


シマウミスズメの求愛(奄美

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モイヤー氏がシマウミスズメの繁殖行動を研究しているときに、オスの青の模様が求愛や威嚇の際に輝くことを発見し、この用語を使い始めたらしい。










当時のアニマの記事と表紙
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ところが、違った意味で使われている場合がある。ホウボウやサツマカサゴなどが胸ビレを広げることをフラッシングと思われているのだ。これにはワケがある。野生動物の専門誌『アニマ』'796月号で、胸ビレを広げたホウボウをフラッシングした、と書かれていた。ぼくもそう信じて雑誌に書いたことがある。







求愛するアカハラヤッコ(奄美
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後にモイヤー氏と仕事をするようになって、本当の意味を知った。ずいぶん前のことなので記憶があいまいだが、あくまでも同種に対してのシグナルで、急激かつ輝くように変化するものをそう呼ぶとのこと。アカハラヤッコのオスは求愛の際、ヒレの周囲が青く輝く。これなどもフラッシングと言っていいだろう。







サザナミトサカハギ(シパダン)
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サザナミトサカハギも体色変化をよくする。オス同士が接近したり、オスがメスにアピールするときだ。











ミナミギンポ。求愛のフラッシング(奄美
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ミナミギンポもオスがメスを産卵に誘うとき、青く輝く。これなどもフラッシングだ。

いずれにしてもフラッシングは瞬間的なものなので、注意深く観察することが必要。