大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

居候(いそうろう)と呼ばれて(1)

ずいぶん昔に真鶴で見て、一目惚れした魚がいた。ハナハゼだ。妖艶で、近寄るとあっという間に姿を消してしまう。長い間美しい姿を捉えることができないでいた。


ハナハゼ。'90年撮影(大瀬崎)                                                                

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観察をして習性を知り、そして撮影機材の進歩のお陰でようやく撮れるようになったのは'90年ごろ。ハナハゼは中層を浮遊しているが、危険を感じると近くの共生ハゼの巣穴に身を隠す。そのため居候と言われている。









ダテハゼに近寄るハナハゼ(錦江湾
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「共生ハゼ」とは、テッポウエビ類が作った巣穴に一緒に住むハゼ類のこと。ハゼは見張り役で、テッポウエビに危険を知らせるのが役目。九州以北ではダテハゼが最も多く、共生ハゼの代表。









隠れようかと様子をうかがっている(富戸)                                                                

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ハナハゼは海底から1mくらい上を行動域にしている。何となく危険を感じると共生ハゼの近くに移動する。高い位置にいるお陰で、危険な状況をいち早く知ることができる。ハナハゼが近づくことによって、ダテハゼは危険が迫ってくることを予知できるので、見張り役を雇っているようなものかもしれない。したがって、ハナハゼを居候だとは思っていないようだ。






素早く巣穴に入る(富戸)
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その証拠にハナハゼが巣穴に入ろうとしても、ダテハゼは威嚇したり拒否しない。研究者の観察では、稀に巣穴をふさぐようにして拒否することもあるらしいが、ダテハゼの産卵期と関係があるとのこと。









しばらくすると巣穴から出てくる(大瀬崎)
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ハナハゼの特徴は、尾ビレの先端が糸状に56本伸びていること。泳ぐたびにそれがたなびき、優雅さを増す。

分類的には昔はハゼ科だったが、その後オオメワラスボ科になり、現在はクロユリハゼ科になっている。