大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ホタテツノハゼ物語

第一背ビレが特徴のホタテツノハゼ。初めて図鑑に載ったのは、益田一氏らが制作した『魚類図鑑・南日本の沿岸魚』(東海大学出版会)で、'75年のこと。標本写真で、和歌山県田辺湾の水深14mの砂底から1個体のみ得られた。新属・新種と思われる、と書かれている。



ホタテツノハゼとテッポウエビ'09年、柏島

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時が流れ、'87座間味島の水深30mでユキ坊こと宮村幸文氏が発見した。現在は「マリンショップ・ハートランド」のオーナーだが、当時は他のサービスのガイドだった。紅白のテッポウエビと一緒にいるホタテツノハゼの写真を見せてもらい、ぜひ撮りたいと案内してもらったが、すぐに引っ込んでしまって撮れなかった。







ホタテツノハゼのペア('08年、奄美

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それから4年後の'91年、柏島でも発見され、同年7月に撮影することができた。その写真は『日本の海水魚』(山と渓谷社)に掲載された。その後奄美大島の黒崎西、黒崎東の2ヵ所で生息が確認された。このポイントは水深約24mで、複数組見られる。数が多いと警戒心が弱くなるので撮影しやすい。ということで何度も撮影した。その結果、共生エビは紅白のもの(現コトブキテッポウエビ)がほとんどだった。





巣穴から離れることも('09年、座間味)

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また、巣穴から離れることもよくある。5060cmは普通で、近寄ると焦って巣穴に戻ることもあるが、のんびりとしていることもある。第一背ビレを広げたり閉じたりを繰り返すのは警戒や威嚇のためのようで、安心しているときは閉じる。そうするとただの棒のようで、まったく魅力がなくなってしまう。








白くなることも('06年、奄美

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奄美で友人が、白くなったホタテツノハゼの写真を見せてくれた。ずいぶん粘ったそうだ。もしかしたら怒ると白くなるのかと思い、同じ個体を粘って撮ってみたら確かに白くなった。おそらく個体によってで、縄張り意識の強い個体だからだろう。









求愛行動!?'06年、奄美
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あるとき奄美・黒崎西でホタテツノハゼを撮り終え、戻る途中別の2尾がケンカをしていた。観察を続けると片方の体色が変わった。どうやら求愛だったようで、婚姻色なのかもしれない。現在では伊豆大島以南の各地や海外でも生息が確認されているものの、未だに新種記載されていない。