大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

カンムリブダイ繁殖の論文

ナショナルジオグラフィックメールマガジンに、カンムリブダイの生態に関する記事が出ていた。米研究チームがウェーク環礁で繁殖生態を観察し、学術誌に論文を発表したというもの。


カンムリブダイ(ラジャアンパット)

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ウェーク環礁とは米国領で、マーシャル諸島の北。ハワイと沖ノ鳥島の中間あたりに位置する。











サンゴをかじるカンムリブダイ                                                  

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冒頭で、カンムリブダイの現在の状況は絶滅の危機に瀕している。理由は人間が活動するエリアと生息地が重なるので、漁の対象になりやすいためとしている。また、生きたサンゴを主食にしているので、サンゴの増え過ぎを抑え、健全なサンゴ礁を守る役割を担っている、と書かれている。






                                            

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注目したのは繁殖に関することだ。論文によると、満月の夜にオスが海底の決まった場所に集まり、集団でやって来るメスを待つ。メスが通るとオスは体色を変え、メスの前で激しく求愛ダンスを始めるという。

(写真はナショジオのメルマガより。論文とは無関係)








顔を白くすることがある(ラジャアンパット)
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気に入ったオスを見つけたメスは近づき、顔を白くして体を寄せ合い産卵すると書かれている。文章からするとペア産卵のようだ。しかし疑問が残る。パラオでのカンムリブダイの産卵は早朝で、しかもグループ産卵なのだ。桑村哲生著『サンゴ礁を彩るブダイ』(恒星社厚生閣)にも書かれているし、NHKダーウィンが来た!」でも放送された。だが、このメルマガには肝心の写真はなく、掲載の写真はバリで昼間撮影されたものだ。




ナショジオのメルマガより
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カンムリブダイは昼行性で、夜は岩陰で眠ることが知られている。この論文にもそう書かれているが、産卵時だけ夜更かしするのだろうか。

パラオとウェーク環礁の距離は約3000km。たったこれだけの距離なのに、生態が異なるのはまったく不思議だ。