大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

スパインチークアネモネフィッシュについて

クマノミの仲間は全世界に26種いる。うち25種はクマノミ属で、残りの1種がプレムナス属のスパインチークアネモネフィッシュになる。日本には分布しないので和名はない。最大の特徴は、頬にトゲがあること。それが英名の由来になっている。全長約15cmにもなる。アンダマン海(インド洋東部)からオーストラリア・グレートバリアリーフGBR)付近までの熱帯域に分布している。

スパインチークアネモネフィッシュ(コモド)

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鮮やかなオレンジ色の体に白くて細い帯が3本入っているが、これに当てはまるのはオスか若いメス。経験を積んだメスの体色はくすんで黒っぽくなり、白帯も目立たなくなる傾向がある。

メスは黒ずむ場合が多い(GBR

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スパインチークアネモネフィッシュは、ペアだけでいることが多い。他のクマノミ類のように3尾以上でいるのは見た覚えがない。幼魚もこれまで2個体しか見ていないので、少ないのだろう。マレーシアのマブールで見た幼魚は、珍しくヒレが黒かった。

スパインチークの幼魚(左はマブール、右はインドネシア

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スパインチークには不思議なことがある。何度も観察したのだが、産卵はおろか、卵を世話している場面にも出会ったことがないのだ。熱帯海域なので繁殖期は年中と思われるのだが。ラジャアンパットでは、オスとメスが別々のイソギンチャクに住んでいた。何か暗示しているのだろうか。

別のイソギンチャクに住むオスとメス(ラジャアンパット)

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20年近く前、スパインチークアネモネフィッシュが伊豆半島の富戸に出現した、という記事がダイビング誌に載ったことがある。写真を見るとなぜか体色は黒い。もちろん日本にはいないので、心ないダイバーがおもしろがって飼育していたものを放したのだろう。当然水温の低下とともに姿を消してしまう。

富戸に出現したというダイビング誌の記事

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図鑑によると、スパインチークが住むイソギンチャクは1種となっている。その1種とはサンゴイソギンチャクだ。しかし、いろいろ見てみると1種ではなさそうだ。その他にウスカワイソギンチャクやタマイタダキイソギンチャクも宿主にしていると思うのだが…。

まだ謎多きスパインチークアネモネフィッシュ(ラジャアンパット)

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