大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ムスメベラの分布と生態

ベラ科のムスメベラは全長約22cmになり、千葉県以南~台湾、ニューカレドニア、オーストラリア南東部、ニュージーランドに分布する。琉球列島も分布に入っているが、奄美や沖縄では見た覚えがない。このことから高水温が苦手な温帯域のベラではないかと推察できる。その証拠に、赤道付近の熱帯海域を通り越して南半球でも北半球と同緯度あたりに分布しているからだ。

ムスメベラのオス(富戸)

 

オーストラリア南東部のシドニーから770km沖合にロードハウ島がある。そこでダイビングしたとき、ムスメベラを撮影した。日本のとは体色・斑紋が少し違ったが、地域変異らしい。

ムスメベラのオス(ロードハウ)

 

ムスメベラの幼魚期は、白黒の体で、遠くから見ればホンソメワケベラの幼魚に似ている。それだけでなく、生態もそっくりで、熱心にクリーニングを行う。

キタマクラをクリーニングする約5cmの幼魚(富戸)

 

幼魚だけでなく、若魚になってもクリーニングを行うことが知られている。そのため、本種がいるところには他の魚が集まってきて、クリーニングステーションになっている。

マツバスズメダイをクリーニグする約8cmの若魚(富戸)

 

ロードハウに生息するムスメベラも、幼魚はスズメダイをクリーニングしていた。遠く離れた南半球でも同じ生態だったことに、なぜか胸が熱くなったのだった。

スズメダイをクリーニングする約4cmの幼魚(ロードハウ)