SEA&SEAのヒット商品は、意外かもしれないがモーターマリンだ。81年にポケットマリン110 SE、83年にモーターマリン35 SEを開発している。ニコノスと同じくカメラ自体防水だが、レンズ交換できないため、本格派は手にしない。その代わり、気軽さを好む海外の人には大人気。相当輸出したらしい。日本でもモーターマリンを盛り上げようと、月刊ダイバーとSEA&SEA共催でフォトコンテストを行うことになり、審査員の一人に選んでいただいた。審査員はSEA&SEA社長とプロ写真家3名。コンテストは毎月あり、プロ写真家は交代で行い、1年の締めくくりに全員集まって年度賞を決めるというもの。
モーターマリン35
SEA&SEAの経営は、素人から見てもちょっとおかしいと思う点がある。「思い付き」という感じなものが多いのだ。90年、SEA&SEAの中に(株)シーアンドシープロダクツを設立。業務内容は、新製品の開発とテストが主らしい。この設立を知ったのは3~4年後で、「思い付き」はどうやらこのプロダクツらしい。92年12月に新型のモーターマリンⅡを使用してのロケの撮影をお願いされた。場所は沖縄の座間味島で、モデルも一緒だという。雑誌で活躍しているTさんで、移動日を除くと潜れるのは3日間だが、マクロ撮影、ワイド撮影など、多くのレンズを使って撮る必要がある。ところが、モデルはドライスーツを着るという。サンゴ礁にドライは不自然、おまけに曇天だったため、マクロ中心に撮影した。結局、作例写真でのパンフレット制作はお蔵入りになった。ただスタッフが沖縄に行きたいだけだったのだろうか。
モーターマリンⅡEX
1994年にリコー製一眼レフ用のハウジングを開発し、発売する話があった。SX-1000という。このSX-1000を発売前にPRしたいので、試作品で作例写真を撮影してほしいと依頼され、現物が送られてきた。カメラ本体、6種類のレンズ、ストロボ、ハウジング&ポートの一式で、相当な額になる。これをもらったとしても、使い慣れないカメラはリスクがあるし、メリットが感じられない。そこで、作例作品でマニュアル本をつくることを提案した。このカメラはオートフォーカスではなく、手動式。時代に逆行するようだが、手動のよさをアピールしつつセミナーや雑誌などでPRした。テスト撮影すると、ワイドレンズでは周辺がボケることが判明。ドームポートがよくないのだ。改良を提案したが、予算の都合で難色を示された。多少やる気がそがれつつも、マクロで作品を増やした。その間、他のメーカーのカメラは進化し、オートフォーカスの性能も格段によくなり、SX-1000は販売中止に。95年に発売されたニコノスRSの影響もあったようだ。
日の目をみなかったSX-1000とワイドレンズで撮った写真
1997年、JICA(国際協力事業団、現国際協力機構)が開発途上国の関係者を沖縄に招き、サンゴ礁保全の研修を3か月間行う国家プロジェクトがスタート。その中で水中撮影の講習もあり、講師を依頼された。参加者は7名前後で、全員分の水中カメラを調達しなければない。担当者はレンタルを考えていたようだが、全員分を1週間レンタルは現実的に不可能。そこで、SEA&SEAに相談。モーターマリンを全員分無料で貸し出してくれた。ちなみに、翌年からはニコノスVにした。
1997年12月、SEA&SEA創立25周年記念パーティーが高輪プリンスホテルで開催された。招待されて出席したのだが、なぜか写真がまったくない。
2000年あたりからしだいにデジタルカメラに代わってきた。性能も向上し安価になったので、ぼくも05年からデジタルカメラを使い始めた。ニコンD70およびD80で、ハウジングはアンティス社のネクサスを使用した。SEA&SEAもデジタル一眼用のハウジングを制作し始めた。デジタルカメラはモデルチェンジの周期が早いので、ハウジングメーカーは大変だと思う。いつだったかは忘れたが、SEA&SEAからハウジングをプレゼントするから、使ってほしいという話が。ありがたい話だが、現在使用中のハウジングに替えてということだったので、お断りした。この話は、当時活躍中のプロの写真家多数にしたようで、7名前後が受け入れて「アンバサター」になっている。お断わりした大きな理由は、理想としていた小型・軽量ではなかったからだ。
ニコンD7100用のSEA&SEAハウジング(2013年発売)
Fisheyeの傘下となったとはいえ、SEA&SEAがこれまで培ってきた技術やスピリッツを、今後も継承して新たな開発・製作を続けていってほしい。ロゴが残る限り…。
マリンダイビングフェアのFisheyeのブース。SEA&SEAのロゴも(23年4月)