食卓に上るイカの多く(スルメイカ、ヤリイカなど)は、沖合や深海に生息するため、ダイビングではなかなか出会えない。そこで、比較的よく見られるイカを紹介しよう。
温帯域の砂地や転石帯ではボウズコウイカが見られる。コウイカの仲間で、体に甲羅(骨)があるためその名がある。ボウズコウイカは比較的小型で、10cm前後になる。
ボウズコウイカ(富戸)
アオリイカもよく見られる。特に春ごろから繁殖期になるので、産卵するため浅瀬にやって来る。最近では木の枝を束ねて産卵床として海底に設置している海が多いので、観察・撮影しやすくなっている。
アオリイカは南西諸島にもいるが、生態が異なるらしい。ひと房に入っている卵の数に違いがあるうえ、産卵場所もサンゴや岩の下の見えないところ。奄美ではサンゴの下に産んだり、ウミカラマツの枝に産んだりするので、両タイプいるのかもしれない。
コブシメはコウイカの仲間で、大型になる。主にサンゴ礁に生息する。繁殖期は春から初夏で、毎年決まった海域のサンゴに産卵に来る。1個体のオスが複数のメスを従えたハレムを形成するものもいれば、単独オスもやってくる。産卵場所で観察していると、産卵、オス同士の争い、交接などが見られる。
枝状サンゴの上を移動するコブシメ(奄美)
ガレキの海底に小さな岩があった。しかし微妙に動いている。ガイドがライトを当てると色を変えて動き出した。保護色をしていたイカだった。カミナリイカだとガイドが教えてくれた。始めて見るイカだった。
珍しいうえ、とても華やかなイカにも出会った。ハナイカだ。大きさは約7cmで小型だが、色合いが美しい。このときは休んでいたのでさほど変化しなかったが、エサを捕えるときや求愛のときはネオンのように色彩が変化する。
ハナイカ(マレーシア・マブール)