大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

イカの繁殖期到来(アオリイカ編)

コブシメと並んでダイバーお馴染みのイカアオリイカだ。特に温帯域でよく目にする。シンドウイカ科で腕を伸ばすと約60cmになる。ただし、通常見られるのは3050cmで、大型のものは繁殖期に現れる。房総半島以南の西部太平洋に分布するが、沖縄のものは別タイプらしい。

若いアオリイカ10月、富戸)

f:id:youjiuo:20210412141110j:plain

 

その年の水温によって若干異なるが、4月から7月くらいまでがアオリイカの繁殖期になる。近年は、木の枝を束にして海底に沈め、産卵床にするケースが多い。コブシメ同様、オスが数尾のメスと来て、産卵の間そばで見守る。ダイバーが接近しすぎると、オスが間に割り込むこともある。

木の枝の産卵床に産卵するメスと見守るオス(095月、柏島

f:id:youjiuo:20210412141158j:plain

 

木の枝の産卵床はアオリイカにとってはありがたいようで、よく卵を産む。正確には卵のうといい、房状の袋。その中にに卵が5個入っている。伊豆では確か椎の木だったと思う。和歌山では間伐したヒノキとのこと。地域によって木の種類が違うようだ。

産み付けられた卵のう。1房に卵が5個入っている(095月、柏島

f:id:youjiuo:20210412141253j:plain

 

19934月下旬に柏島で産卵を観察したときは、刺胞動物のオドリカラマツの根元に産み付けていた。他にはホンダワラなどの海藻にも産卵するが、こうした生物が減少したため木の枝を沈めたのかと思ったら、和歌山では昔から行っていたようだ。習性を利用した漁師の知恵で、収獲も増えたため各地に広まったのだろう。

オドリカラマツに産卵するアオリイカ934月、柏島

f:id:youjiuo:20210412141348j:plain

 

アオリイカも交接をするが、どのようなものなのかわからなかった。コブシメと同じと思っていたが、違うようだ。オスとメスが腕を絡めた場面に出会ったので撮影したが、これが交接かどうか今でも確信がもてない。

交接のような行為を行うアオリイカ154月、柏島

f:id:youjiuo:20210412141440j:plain