大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

3年ぶりの奄美(4)

ダイビング最終日、産卵を期待して7時に潜る。サークルへ向かう間、ドキドキだった。果たして…。

筋は消えており、フグが卵の世話をする動作をしていた。ひと安心だ。過去に筋が消えていないことが何度かあったからだ。消えていないと、産卵は翌日に持ち越される。延泊せずにすんだ。

筋模様が消えたミステリーサークルと卵の世話をするオス

 

5分後、メスがやって来た。オスは一旦メスを追い払うしぐさをする。メスは左右に逃げながら次第にサークルに入る。

メス(右)を追い払うしぐさをするオス

 

そして中央に着底するとオスが接近する。このとき、メスがどっちを向くのかはわからない。着底してからゆっくり回ることもある。

メス(左)が着底するとオスが接近

 

隣に並んだオスは、メスの頬を噛む。そして体を震わすように産卵する。その瞬間は23秒で終わり、メスは出て行く。頬を噛むのは受精のタイミングを計るためと考えられている。

メスの個体識別をしているわけではないので確かなことはいえないが、複数のメスが来ていると思われる。また産卵も、何度かに分けているようだ。なぜなら、腹部が徐々に小さくなるからだ。産卵が行われるのは早朝11時だが、遅くなるほどまばらになる。今回産卵は10回以上観察したが、一度も正面を向いてくれなかった。こればかりはどうしようもなく、運がなかったとしかいいようがない。

産卵中のペア。白枠内は噛んでる様子

 

産卵を終えるとオスが卵の世話をする。ヒレで砂を混ぜ、新鮮な海水を送る。サークルの中央に筋があるときは細かな砂だったが、産卵のときには粗い砂に変わっている。粗いほうが卵のためにはよいのだ。卵は56日後の夜にふ化する。

卵の世話をするオス。下は、サークルの真ん中をヒトスジタマガシラが通過