海の魚を観察していると、陸上の野生動物の暮らし方とはだいぶ違うことに気づく。例えば「併泳」。別種同士が一緒に行動することだが、陸上動物がそうしている場面は見た覚えがない。
カマスベラとマルクチヒメジ
併泳は、ヒメジ類とベラ類の組み合わせが最も多い。
シロタスキベラとマルクチヒメジ
ベラ類はいろいろな種だが、ヒメジ類はマルクチヒメジが圧倒的に多い。俊敏で活動範囲が広いからだろうか。マルクチヒメジが若魚の場合は、自らベラ類につくようだ。
クギベラとマルクチヒメジ
海底は複雑で小魚が隠れやすい。ヒメジ類がヒゲを使って隙間から小魚を追い出すと、四方八方に逃げる。一方のベラ類も小魚を追い出す。単独で行うよりもう1尾捕食者がいることにより、小魚はさらにパニックに陥るため、どちらの捕食者も有利になると考えられる。
タレクチベラとマルクチヒメジ
タレクチベラやシマタレクチベラにつくマルクチヒメジは、おこぼれを狙っていることが多い。タレクチベラは細かなガレキや砂を含んでエサだけを食べ、砂などはエラや口から出す、という食事の仕方。海底に口をつけた瞬間に飛び出す小動物をヒメジ類は待っているのだ。
マルクチヒメジは色彩変異がある。
シマタレクチベラとマルクチヒメジ
マルクチヒメジはヒメジ類の中でも遊泳力がある。例え併泳相手と離れてしまってもすぐに戻ってまた行動できる。動きも素早いので、こうした「併泳」にはピッタリの魚だ。