大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

14年前のNHKスペシャル

2/23は祝日のためNHKの放送は変則的。9時からはニュースではなく、NHKスペシャルだった。しかも2008年に放送しましたとのテロップが流れた。14年前の番組を見せるのか、とそのとき思ったが、タイトルの「映像詩」が気になって見ることに。

14年前の番組タイトル

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14年前とバカにしていたのは間違いだった。小型カメラを駆使したり、定点カメラで時間の経過を撮ったり、今見てもまったく見劣りしない撮影技術なのだ。

枯草の土地が季節の変化で緑に変わるシーンは、三脚にカメラを取り付け、数か月撮り続ければ目的の映像は撮れる。しかし、カメラをゆっくり移動しながら樹々が芽生えて状況が変化するという映像もあった。この時代はまだドローンがなかった?と思うので、一体どのようにして撮ったのだろうか。撮影では無理なので、おそらく編集技術なのだろう。

いずれにしても、ビフォーアフター的な映像や写真は大好きなので、ずいぶん堪能できた。

風景が変化するシーン

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最後に取材スタッフのテロップが流れた。企画は自然写真家の今森光彦氏で、撮影や音声の3名は一緒に仕事をした方たちだ。また、ディレクターも直接ではないが同じ仕事をしている。そしてプロデューサーは昨年亡くなったMさんだった。何度もご一緒した方で、NHKスペシャルでは素晴らしい番組をたくさん制作されていた。この「映像詩・里山」シリーズ第3弾もとてもよかった。

数々のビフォーアフター映像

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写真展準備完了

昨年は中止を余儀なくされた写真展「海で逢いたい 」。今年はなんとか開けそうだ。開催か中止かの目安の一つが会場。緊急事態宣言などの理由で休館になれば中止せざるを得ない。ところが、感染対策をしつつ社会経済活動を回すという国の方針のため、公共施設の会場は例え宣言が出ても休館しないとのこと。それを受けて準備を進めたのだ。

「海で逢いたい」Vol.25 の案内状

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今回は出品数が少なかったため、2020年に出版した写真集『サンゴ礁の海 生きるための知恵くらべ』より20点選び、「特別企画展」も併せて行うことに。

特別企画展の案内状

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プリントチェックも何度かした。場所は半蔵門にある「JCII 日本カメラ博物館」。JCIIを直訳すると、日本カメラ産業協会(会館)になる。博物館も併設していて、カメラの歴史が学べる。プリントチェックは講義室で計3回行い、無事終了した。

感染対策に関しての考え方は人それぞれなので、ぜひお越しくださいとは言えないのが残念。対策に自信がある方のみ見に来てください。なお、感染状況によっては直前あるいは開催中でも中止の可能性があるため、事前に「写真展 海で逢いたい」HPまたはQRコードで確認願います。

プリントチェックの様子

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ミヤコテングハギについて

ニザダイ科のミヤコテングハギは、相模湾以南の太平洋、インド洋、紅海に分布する。日本では奄美以南でよく見られる。全長は60cmに達するとされるが、出会うのは4050cmが多い。以前は「ミヤコテング」という名で図鑑に載っていたが、その後「ミヤコテングハギ」になった。ミヤコが付くので、日本で最初に発見されたのは宮古島なのだろう。

ミヤコテングハギ(コモド)

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ニザダイ科の英名は「サージョンフィッシュ」で、外科医という意味。尾柄部に手術で使うメスのようなトゲ(?)があるからだ。骨質板というらしい。本種の骨質板は鮮やかなオレンジ色で囲まれている。武器を持っているアピールという説もあるが、活用しているのは見たことがない。

尾柄部の鋭い骨質板はオレンジ(コモド)

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本種は顔も特徴がある。なぜこのような色合いなのか、定かではない。オスとメスの違いは、尾ビレ上下の先端で、オスは糸状に長く伸びる。顔に関しては色合いが薄い個体もいるので、濃いほうがオスかもしれない。

ミヤコテングハギの顔(奄美

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ニザダイ科のほとんどは藻食性。本種も例外ではないが、ハイオウギ類という藻類をよく食べている記録がある。

藻類を食べるミヤコテングハギ(奄美

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本種は群れることはないと図鑑に記されているが、稀に群れを見ることがある。パラオでは、本種が群れで行動しているのは、サメに追われたからと聞いたことがある。間違いではないと思うが、群れるから標的になるとも考えられる。繁殖のために群れになり、そこを天敵に狙われる、というのが本当のところかもしれない。

サメから逃げのびた(?)群れ(タヒチ・ランギロア)

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2大洋味わえるタイ(太平洋編)

タイの東側は太平洋で、ダイビングで知られるいるのはサムイ島とタオ島だ。ただしサムイ島の周辺は砂地のため、滞在したとしても潜るのはタオ島付近になる。この二つの島がある海域は大きな湾(タイランド湾あるいはシャム湾と呼ばれる)で、やや閉鎖された環境のため、魚類相がちょっと変わっている。

ツキチョウチョウウオは他の海域ではあまり見られないが、タオでは生息数も多く、運がよければ群れにも出会える。

ツキチョウチョウウオの群れ(タオ島

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クロリボンスズメダイも多く、これほどたくさん見られる海は珍しい。水温が常に高いためか、繁殖行動も頻繁に見ることができる。

とにかく生息数が多いクロリボンスズメダイタオ島

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タオ島にはサンゴ礁岩礁、砂地、ガレ場などさまざまな環境が揃っていることで、魚類相が豊富だ。ハゼ類も多く、珍しいギンガハゼもあちこちで見られ、色彩変異にも容易に出会うことができる。

ギンガハゼのペア(タオ島

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クマノミ類ではハナビラクマノミとトウアカクマノミが多い。特に後者は、ビーチ沖の砂地に何10組も生息している。地元のダイビングサービスでは毎日にように観察してデータを取っているため、繁殖に関する撮影も難なくできる。

トウアカクマノミのペア(タオ島

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タオ島ではハナダイ類はあまり見られない。しかし、ある一定のポイントではアカオビハナダイが群れている。あまり生息数が多いハナダイではないので、群れで見られるのは鹿児島県・錦江湾くらい。したがって不思議としかいいようがない、このように1種類の魚がたくさん生息しているというのが、タイの太平洋側の特徴といえよう。

アカオビハナダイの群れ(タオ島

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2大洋味わえるタイ(インド洋編)

マレー半島の中央から北がタイで、インド洋と太平洋に挟まれている。二つの大洋に面している国は他にインドネシアやオーストラリアがあるが、手軽に潜れる点ではタイに軍配が上がる。そこで、タイのインド洋側と太平洋側の魚類相を比べてみたい。まずはプーケットカオラックのインド洋側。

チョウチョウウオの仲間のコラーレバタフライフィッシュは、チョウチョウウオのインド洋型。ペアか小さな群れでいる。

コラーレバタフライフィッシュプーケット

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フタスジリュウキュウスズメダイに似ているが、筋が1本しかない別種。インディアンダッシラスという。習性などはフタスジリュウキュウと同じ。

インディアン ダッシラス(プーケット

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モンツキベラだが、インド洋型。違いは腹ビレで、太平洋型のそれには黒斑があるのに対し、インド洋型は赤い。

モンツキベラのインド洋型(プーケット

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クマノミの仲間でレッドサドルバック アネモネフィッシュ。ハマクマノミに似ているが、顔のところの白帯がない。中には体側の黒斑がない個体もいる。

レッドサドルバック アネモネフィッシュ(スミラン諸島)

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シマタレクチベラで、見た瞬間は婚姻色かと思っていた。ところが、太平洋で見るシマタレクチベラの婚姻色とは色合いが異なるので、なぜだろうかと思っていた。図鑑にはサドルバック ラスという名で載っていたが、シマタレクチベラの色彩変異とも考えられるとも記されていた。

シマタレクチベラのインド洋型?カオラック

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Marine Diving Webに掲載

ダイビング情報サイト Marine Diving Webに「水中写真 作品探訪」というページがある。編集者がそれぞれの写真家に撮影秘話を聞いたりしながら、数点の作品を掲載する連載ページ。先月下旬にインタビューされた記事と作品が、2/10に掲載された。

大方洋二|水中写真家 作品探訪|Marine Diving web(マリンダイビングウェブ)

水中写真 作品探訪」のトビラページ

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質問された主なテーマは、①水中写真家になったきっかけ ②生態写真に目覚めたきっかけ ③ミステリーサークルを作るフグの発見秘話 ④今後の目標・予定など。

①と②は40数年前のアマチュア時代のことなので、回想しながら文を綴った。特に撮影機材のローライマリンの話は、10年くらい愛用した水中カメラなので、熱くなってしまった。このカメラはもともとフラッシュガンなのだが、不発が多かったため、譲り受けてからストロボ仕様に変えた。

フラッシュが付いたローライマリンと赤根埼のスナイソギンチャク

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Marine Diving Webに「マリンダイビングフェア2022」の案内もあった。これまでどおり会場は池袋サンシャイン、開催時期も4月第1週末。今から楽しみだ。

マリンダイビングフェア2022のポスター

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シチセンチョウの分化を考える

チョウチョウウオ科は、ちょっとした模様の違いにもかかわらず、別種になっている場合が多い。それだけ分化が進んでいるといえるのだろう。同科のシチセンチョウチョウウオは、奄美大島以南の西部太平洋に分布する。全長約10cmの小型種で、ペアか単独で行動している。体色は黄色で、背には縞模様、腹には斑点模様がある。

シチセンチョウチョウウオ(座間味)

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小型海藻や小動物、サンゴのポリプなどを食べる雑食性で、常にエサを探して行動している。幼魚はサンゴのすき間に住み、あまり大きな移動はしない。成長と共に行動域を広げる。

全長約3cmのシチセンチョウチョウウオの幼魚(ラジャアンパット)

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シチセンチョウチョウウオの近縁種にドットアンドダッシュバタフライフィッシュがいる。ニューギニア島から南太平洋、オーストラリアのグレートバリアリーフGBR)まで分布している。色合いはシチセンチョウと同じだが、背の縞模様が斜めになっている。どう考えてもルーツは同じということがわかる。

ドットアンドダッシュバタフライフィッシュ(フィジー

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シチセンチョウチョウウオの分布も東は南太平洋までなので、GBRタヒチ、フィジーなどでは両種が重なることになる。

シチセンチョウの分布。右はドットアンドダッシュバタフライの分布

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だいぶ前にGBRで潜ったときに両種が見られると思ったが、ドットアンドダッシュのみだった。しかも縞模様が乱れたペアだった。片方なら突然変異と考えられるが、2尾ともとなるとこのような系統があるのかもしれない。

縞が乱れているドットアンドダッシュバタフライのペア(GBR

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シチセンチョウチョウウオも縞が乱れている個体をよく見かける。分化が進んでいるからではないだろうか。数百年後には縞模様の部分が別の模様の亜種あるいは別種が登場しているかもしれない。

シチセンチョウチョウウオのペア。片方の縞が乱れている(奄美

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