チョウチョウウオ科は、ちょっとした模様の違いにもかかわらず、別種になっている場合が多い。それだけ分化が進んでいるといえるのだろう。同科のシチセンチョウチョウウオは、奄美大島以南の西部太平洋に分布する。全長約10cmの小型種で、ペアか単独で行動している。体色は黄色で、背には縞模様、腹には斑点模様がある。
シチセンチョウチョウウオ(座間味)
小型海藻や小動物、サンゴのポリプなどを食べる雑食性で、常にエサを探して行動している。幼魚はサンゴのすき間に住み、あまり大きな移動はしない。成長と共に行動域を広げる。
全長約3cmのシチセンチョウチョウウオの幼魚(ラジャアンパット)
シチセンチョウチョウウオの近縁種にドットアンドダッシュバタフライフィッシュがいる。ニューギニア島から南太平洋、オーストラリアのグレートバリアリーフ(GBR)まで分布している。色合いはシチセンチョウと同じだが、背の縞模様が斜めになっている。どう考えてもルーツは同じということがわかる。
シチセンチョウチョウウオの分布も東は南太平洋までなので、GBRやタヒチ、フィジーなどでは両種が重なることになる。
シチセンチョウの分布。右はドットアンドダッシュバタフライの分布
だいぶ前にGBRで潜ったときに両種が見られると思ったが、ドットアンドダッシュのみだった。しかも縞模様が乱れたペアだった。片方なら突然変異と考えられるが、2尾ともとなるとこのような系統があるのかもしれない。
縞が乱れているドットアンドダッシュバタフライのペア(GBR)
シチセンチョウチョウウオも縞が乱れている個体をよく見かける。分化が進んでいるからではないだろうか。数百年後には縞模様の部分が別の模様の亜種あるいは別種が登場しているかもしれない。
シチセンチョウチョウウオのペア。片方の縞が乱れている(奄美)