大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ブルー・タイルフィッシュについて

キツネアマダイ科のブルー・タイルフィッシュは、全長約15cmで西部太平洋のサンゴ礁域に分布している。顔は青く、それ以外は淡い黄色。サンゴ礁外縁のやや深いところに生息している。プランクトン食で海底から数m上を浮遊していて、近寄ると海底の穴に身を隠す。海外の図鑑では、ブルーヘッドタイルフィッシュになっている。

ブルー・タイルフィッシュ(09年、コモド、27m

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1974年に新種記載され、日本では80年代前半にマニアックなダイバーによって生息が確認された。ぼくが最初に見たのは座間味の外海で、水深40mくらいのところ。しかしすぐに隠れて撮影できなかった。そのときのガイドが、アオマスクだと教えてくれた。876月のことだった。

英名はブルーヘッドタイルフィッシュ(03年、奄美34m

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最初に日本の図鑑に掲載されたのは875月発刊の『世界の海水魚』(山と渓谷社)で、それには「アオマスク」となっていた。座間味のガイドはこの図鑑を見て名前を知ったのだろう。

アオマスク?(13年、インドネシア・マウメレ、27m

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その後海外に何度も行くようになり、アオマスクをよく見るようになった。生息水深は深く、おおよそ2530mだ。単独あるいはペアでいることが多いのだが、マレーシアのシパダンでは数尾で群がっていたので、他の海域より生息数が多いのかもしれない。

数尾でいることも(94年、シパダン、30m

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アオマスクは標準和名だと思っていたが、違っていた。国立科学博物館と生命の星・地球博物館と共同で構築した「魚類写真資料データベース」でアオマスクを検索しても出てこないのだ。また、アオヅラアマダイという名が付いたという噂もあったが、どちらも出てこない。キツネアマダイ科で検索したらようやく「ブルー・タイルフィッシュ」ということがわかった。正式に日本初記録種にはなっていないようだ。画像を見比べると、ずいぶん体色が異なっていた。

まだ標準和名はない(14年、インドネシア・マノクワリ、25m

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