大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ヨコシマクロダイの成長過程

フエフキダイ科のヨコシマクロダイは、伊豆半島以南の西部太平洋、インド洋に分布する。成魚は主にサンゴ礁域の岩陰で見られ、あまり動かない。全長60cmになるらしいが、多くは40cm前後。老成した成魚を見ると、どこが「ヨコシマ」なんだと思ってしまう。

45cmのヨコシマクロダイの成魚(座間味)

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幼魚は黒い鞍状の模様があり、それでヨコシマに見える。尾ビレは黄色で、色彩パターンは有毒のシマキンチャクフグと似ている。

約6cmの幼魚(奄美

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そのためか、シマキンチャクフグと一緒にいることがある。いわゆる擬態で、外敵から狙われにくくなる。しかし、当の本人(?)は自分の模様を知っているのだろうか。

上と下がシマキンチャクフグ。約5cmの幼魚(座間味)

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8cmくらいになると鞍状の模様は茶色になり、頭部も少し丸みを帯びてくる。

約8cmの幼魚(奄美

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さらに成長すると腹部の白が広がり、鞍状模様の色も灰色に変わってくる。体型はヨコシマクロダイそのもの。幼魚期は海底近くで生活していたが、このころには1mくらい浮かんで過ごす。

20cmのヨコシマクロダイの未成魚(座間味)

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エサは貝類やウニ類などの小型無脊椎動物と図鑑に記されているが、食べている姿を一度も見たことがない。おそらく夜なのだろう。「ヨコシマ」は30cmくらいから徐々に薄くなり、40cmくらいでほぼ消失する。

35cmの成魚。シマが消え始めている(座間味)

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