大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

早熟なベラたち

魚類の観察で最も興味をそそられるのが、求愛や産卵など繁殖に関する行動だ。産卵に至るまでの駆け引きや感情の変化が読み取れると、一層楽しくなる。


小さなメス(黒い2尾)に求愛するオス                                             

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ベラ類のそうした行動を観察していると、オスが幼魚を追いかけている姿がよく見られる。この写真のカノコベラもそう。縄張りから追い出しているのかと思った。









産卵上昇するカノコベラのペア
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だが違っていた。幼魚ではなく、れっきとしたメスで、オスは求愛していたのだ。成熟したメスと判断するには、腹部が膨れているかを確認するか、産卵を観察するしかない。しばらくしたら、オスと一緒に産卵上昇したのでわかった。








婚姻色で求愛するイトヒキベラのオス
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ベラ類の全部が全部そうではないが、早熟なメスも少なくない。イトヒキベラもそうだ。












産卵上昇するタコベラのペア
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タコベラはさらに差が大きい。伊豆大島や東伊豆で観察したが、オスの縄張り内の産卵場所に幼魚のようなメスが集まってくる。オスが婚姻色になって接近したり、体を震わせる求愛行動に刺激されたメスは、オスに向かって徐々に上昇して放卵・放精する。









産卵上昇するオハグロベラのペア(17:40頃)
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オハグロベラの産卵時刻はだいたい夕方だが、日中も行う。日中は大型のメスの場合が多く、夕方は小型のメスという傾向だ。特に臆病な小型のメスは、天敵が少なくなる時間帯を選んでいるのだろう。