大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

水中ストロボの話

水中用のストロボが登場したのは'68年ごろで、ただしアメリカだった。アメリカのダイビング雑誌『SKIN DIVER'695月号には56種類のストロボの広告が載っていた。日本で市販されたのは確か'73年で、SEASEAのイエローサブ(YS32だった。


'69年の広告と'75年の広告
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それから12年後にYS-150が出たので入手した。10万円弱だった。材質は金属(たぶんアルミ合金)で、水中ではさほど重くなかったが、陸上では持ち運びが大変だった。
SEASEAの広告の上がYS-32で下が旧タイプのYS-150。写真では上のほうが大きくなっているが、実際は逆






NewタイプのYS-150。青く塗っていた。'86
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数年後にYS-150はモデルチェンジし、材質がプラスチックに変わった。かなり軽くなったので、買い替えた。しかし従来品と同じ大きさなので浮力がつき過ぎ、鉛を入れて調整する仕組み。矛盾を感じながら3台くらい使っていたが、'88年に新製品YS-200が発売され、仕事のお付き合いがあったので頂いた。YS-150と比べると小型になって鉛がなくても中性浮力で、性能もアップしていた。




アナハゼ。光が当たった部分が赤い
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このころから環境を入れつつ迫力もと考え、ワイドで接写をするようになったが、気になることが出てきた。それまで気づかなかったストロボが当たったところの色だ。マクロでの接写では生物の本来の色がわからないので、写ったものが本当の色だと思いこむ。しかしワイドで接写すると、水の色との比較で不自然に赤い。これは'891月にアナハゼが交接しようとしているところを撮ったもの。




水色のフィルターを付けた
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そこでストロボの発光部に水色のフィルターを付けたら自然な感じになった。このことをSEASEAのスタッフに聞いてみたら、意外なことがわかった。陸上のストロボは太陽光と色温度が同じ。開発当時、大部分のダイバーが水中撮影する距離は1mから1.5m。太陽光と同じ色温度のストロボでは青っぽくなるため、色温度タングステン光に近づけていたという。それで近距離は赤くなったのだ。




'90年当時の撮影機材
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今では編集ソフトでどのようにでも色を変えられるので、デジカメから水中撮影を始めた方々は信じられないのではないだろうか。大変な時代に活動してきたものだ。
(後ろの大きな二つがNewタイプのYS-150で、右がYS-200。ドームつきのハウジングとYS-150の組み合わせでアナハゼを撮った。中身はニコンF3+20mm