「カニハゼ」と呼ばれているハゼがいる。全長5~6cmで、内湾の砂地や転石帯に生息し、ペアでいることが多い。ハゼなので第1と第2背ビレがあり、体のわりには大きい。それぞれの背ビレに目玉模様があるのが特徴。
カニハゼと呼ばれるハゼ(コモド)
周辺にはシノビハゼも(メナド)
それはともかく、コミカルな動きをするので人気がある。巣穴を持ち、危険が迫ると隠れる。エサは砂の中に潜む小動物で、砂ごと口に含んで砂だけエラから出す。分布はフィリピン、インドネシア、パプアニューギニア(PNG)、グレートバリアリーフ(GBR)など。日本には分布していないので標準和名はない。「カニハゼ」は通称なのだ。
ペアでいることが多い(GBR)
英名はCrab-eyed goby(クラブアイドゴビー)。カニの目をしたハゼという意味だ。おそらく、観賞用に海外から輸入されたとき、英名や学名では親しみにくいということで、ペットショップで「カニハゼ」と呼ぶようになったのではないだろうか。
砂泥底に住んでいる場合は、ホバリングしながら動くたびに砂煙が上がる。
通称カニハゼ(コモド)
日本になぜ出現しないのだろうか。その理由の一つは、内湾性だから。ハゼは海底の巣穴で産卵し、ふ化したあとは浮遊生活を送る。外洋に運ばれる潮の流れがあれば分布を広げやすいのだが、果たしてどうなのだろうか。標準和名として「カニハゼ」と呼ばれる日が待ち遠しい。