大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

タコの本当の泳ぎ方

最新のナショナルジオグラフィックメールマガジンに、タコの画像が載っていた。タイトルは「魅惑的な泳ぎ」~もはや神々しいレベル?~とのキャプションも書かれている。この画像を見て、人間がタコに手を加えたとすぐにわかった。


ナショジオのメルマガの画像
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海中でタコを観察したことがある人なら、こんな状況になるはずがない、と気づくはず。タコは岩やサンゴなどの下あるいは隙間に潜んでいて、移動のときは海底を這うようにする。中層に浮かぶのはタコにとって自殺行為なのだ。この画像は、タコを中層に持ち上げて撮ったようで、しかも繰り返しされたのか疲れているように見え、生気が感じられない。







ダッシュして移動する(奄美
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そこで、本当のタコの泳ぎを見ていただきたい。岩陰から出たタコ(ワモンダコ)は海底スレスレをダッシュする。
このときはキハッソクが後を追っていた。









体を浮かせて移動(奄美)                                            
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そもそもタコは警戒心が強い。「防護服」もないので、天敵を恐れてのことだ。したがって、移動する方法は二通りある。一つは海底を這う方法で、近距離移動の場合が多い。
このときは体色をよく変化させる。カムフラ
ージュして天敵の目をはぐらかせるため。もう一つは海底から10cmくらい体を浮かせてダッシュする方法。こうして次の隠れ場所に移る。





穴を出たタコとカスミアジ(座間味)
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タコが岩穴から出ると、魚たちが興味を持って近寄って来る。大型魚ならば当然穴に引き返すが、それほどでもなければ注意しながら移動する。
このときはヒメジ類や中型のカスミアジなどが来ていた。敵ではないと思ったようで、タコは移動し始めた。







海底を急ぐワモンダコ(座間味)
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次のカットがこれ。タコは海底スレスレをダッシュしている。カスミアジも追っているが、エサとしては大きすぎるようだ。これが本当のタコの泳ぐ姿。
インスタ映え」が流行っているが、ネイチャーフォトでは過剰な演出やヤラセはしてはならない。ナショジオはネイチャーフォトの掲載も多く、手本にもされるので、画像を選ぶスタッフにも勉強してもらいたい。