ハタ科のコクハンアラは、幼魚~若魚の間は派手な体色・斑紋をしている。
約14cmのコクハンアラとシマキンチャクフグ
その色合いがシマキンチャクフグに似ているため、擬態しているのでは、という説もあり、実際そう記されている図鑑もある。
でも本当だろうか?
コクハンアラは成長すると全長1m以上になるといわれている。成魚は小笠原や沖縄に生息しているが、少ないうえに警戒心が強いために出会えるのは稀。海外では生息数も多く警戒心もさほど強くないので、なんとか近寄れる。
成魚なのに幼魚の体色・斑紋(コモド)
擬態については疑わしい。なぜなら本種はモデルのシマキンチャクフグ(約10cm)の大きさを超えても体色・斑紋は変わらないからだ。中には50cmになっても変わらない個体も多いらしい。コモド諸島で出会ったコクハンアラは全長60cmくらいあったにもかかわらず、幼魚と同じような色合いだった。
全長約15cmの個体(座間味)
小さいときだけ捕食者から避けられれば「擬態」は成功したといっていい、しかし、そもそもシマキンチャクフグが有毒なのを捕食者は知っているのだろうか。一度捕食して瀕死の状態を経験すれば学習するだろうが。でもその経験を他の魚に教えるとは考えられないし、もしも命を落としてしまえばなおさら周知されない。
このようなことから、コクハンアラとシマキンチャクフグの体色・斑紋が似ていたのは、たまたまだったのではないだろうか。