大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

復活!シリテンスズメダイ

10数年前からオヤビッチャによく似たスズメダイがいることが知られていた。オヤビッチャは背中の上の部分が黄色で、黒の横帯が5本ある。


シリテンスズメダイの群れ(座間味)

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その近似種は黒帯5本は同じなのだが、体側が淡いクリーム色。オヤビッチャと混泳していることもあるが、近似種だけの群れでいることもある。










シリテンスズメダイ。尾ビレの黒点が特徴
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2009年ごろだったか、この近似種に「シリテンスズメダイ」という和名が付けられた。尾ビレにある黒点が由来だ。やっぱり別種だったのだと思っていたら、いつの間にか「シリテンスズメダイ」は消滅した。オヤビッチャのシノニム(同種異名)ということで、きちんとした分類学的整理が必要とのことだった。







シリテンスズメダイ。枠内が婚姻色(座間味)
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ところが、2017年にシリテンスズメダイが復活。学名はAbudefduf caudebimaculatus。だが、この学名の魚はずいぶん前にA.caudebimaculatus Okada et Ikeda 1939 として新種記載されている。しかしながらシノニムという扱いだったからだろうか、我々が持っている図鑑には載っていなかった。

今回分類学的整理をしたのは、沖縄美ら海水族館鹿児島大学などのようだ。





産卵中のオヤビッチャ(座間味)
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オヤビッチャの繁殖生態とシリテンスズメダイのそれは異なる。特に産卵場所がオヤビッチャは岩の上なのに対し、シリテンスズメダイは岩の窪みの天井、つまり見えない場所に産む。










天井の卵を守るシリテンスズメダイ                                             

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シリテンスズメダイが加わったことで、日本に分布するオヤビッチャ属は8種になった。