大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

キヌバリの地域変異

先月、釣りの雑誌『Fishing  CafeVol.58(季刊)が届いた。以前ロウニンアジ特集のときに写真を貸してから毎号いただいているが、釣りの記事よりも楽しみなものがある。



「魚の不思議な生態学」のページ

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東海大学海洋科学博物館元館長・鈴木克美氏の連載で、「魚の不思議な生態学」。鈴木氏とは何度かお会いしたことがある。今号は「見果てぬ夢はキヌバリの夢」と題してキヌバリを取り上げている。









キヌバリは浮遊するタイプ(東伊豆)
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鈴木氏が大学を出て江の島水族館に勤めたとき、キヌバリが水槽のガラスに産卵しているのを見つけた話もある。通常ハゼ類は岩穴の天井や隙間、貝殻などに産卵し、キヌバリも例外ではないのになぜ見やすい所に産んだのかは、水槽が特殊な環境だからだろうと結んでいる。








佐渡キヌバリ。体側の黒帯は7
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その他にもキヌバリの地域変異のことも書かれている。つまり、千葉県以南、四国までの太平洋に生息するものは体側の黒帯が6本、九州および日本海のそれは7本で1本多いということ(顔の黒帯は数えない)。









東伊豆のキヌバリ。黒帯は6

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キヌバリの地域による違いは、ちょっと魚に詳しい人なら常識。ところが、連載には瀬戸内海と伊勢志摩のキヌバリの黒帯は、中間とある。すなわち、尾ビレのつけ根の1本が短かったり点になっているという。これは知らなかった。改めて「日本産魚類大図鑑」を見たら、そのことが書いてあった。解説されていたのは「明仁親王」。つまり現在の天皇陛下で、さすがハゼ類の研究者だ。