オヤビッチャはいつ見ても卵を守っているイメージがある。実際繁殖期は長いうえ、ふ化から次の産卵までの間隔も短い。
産卵場所は岩が窪んだところ。オスが確保した縄張り内の岩を掃除し、メスを誘う。産卵に誘うメスは複数なので、卵の範囲がけっこう広くなる。メスもまた別のオスのところでも産む。自分の子孫を確実に残すためだ。産みたての卵は赤紫をしていて、日が経つにつれて黒ずむ。
黒ずんだ卵を守るオス(慶良間)
卵は栄養があるので、他の魚から狙われる。他種だけでなく、同種からも狙われることがある。自分の遺伝子が入っていなければ、栄養豊富な食べものとしか思えないのかもしれない。卵を守るのはオスだけ。
卵とそれぞれのオス(慶良間)
縄張りは隣接していて、それぞれのオスは卵の上でホバリングして守る。それをベラ類やチョウチョウウオ類などが虎視眈々と狙っている。単独で食べに行った場合は簡単に追い払われてしまう。といって魚同士協力はしない、というよりできない。ベラ類など素早い魚がスキをみて食べるくらいだ。
卵を食べるベラ類(コモド)
卵を狙っている魚たちの最大のチャンスは、ダイバーが来たとき。ダイバーが近づくとオスは恐れて離れるので、そのスキに食べる。魚たちも学習していて、ダイバーの行動を見ているのだ。それでも卵は食べ尽くされることはない。そうしたことも計算済みで、たくさん卵を産むことがオヤビッチャの繁殖戦略なのだ。