大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

水中写真家 フィリップ・シュルケのこと

アメリカの水中写真家は3人会ったことがある。フィリップ・シュルケ、デビット・デュビレ、クリス・ニューバートだ。今回はフィリップ・シュルケのことを書いてみたい。
 
『SKIN DIVER』'69年5月号と中にあった広告
イメージ 1ぼくが水中写真始めた'64年ごろは日本に情報がないため、洋書店でダイビング雑誌『SKIN DIVER』や写真集を見ていた。ニコノスが発売されたばかりにもかかわらず、数多くの撮影機材や付属品が雑誌に載っていてうらやましく思っていた。
 
 
 
 
 
 
 
フィリップ・シュルケ撮影のシャチ
イメージ 2そのころの雑誌『Photography Annual』
('67年)で、衝撃的な写真を目にした。シャチを撮ったものだ。撮影者はFlip Schulkeとあった。シャチは生け簀に飼われている「ナム」という名で、'66年に「殺人鯨ナム」というタイトルで映画にもなっている。
 
 
 
 
 
 
 
超広角レンズで撮っている
イメージ 3この雑誌に掲載された写真は『ナショナルジオグラフィック用に撮影されたものを転載したらしい。それはともかく、シャチの写真は超広角レンズで撮っている。ニコノス用レンズはまだ28mmしかない。彼は「フィリップ・シュルケエンタープライズ」という会社を持ち、水中撮影機材の研究開発もしていて、超広角レンズを使っていたのだ。
 
 
 
 
 
シャチの英名はキラーホエールといい、クジラも襲う
イメージ 4当時ぼくはサラリーマンで、趣味として水中撮影をしていた。広告代理店・電通のダイビングクラブと交流があり、ある日映写会に招かれた。アメリカの水中写真家フィリップ・シュルケが海中居住計画「テクタイトⅡ」を16mmで撮影した記録映画の上映で、そのプレゼンのために電通から招かれて来日したのだ。撮影テクニック&映像美に感動したが、あのシャチを撮った写真家と 同一人物とはそのときは気づかなかった。
 
 
 
コマツ水中ブルドーザーと白枠内は撮影に臨むぼく
イメージ 5
それから1週間後、ぼくはバイトでコマツの水中ブルドーザーを16mmで撮影することになった。場所は茨城の鹿島港。なんとフィリップ・シュルケもスチール写真を撮るという。しかし水はかなり濁っている。水深8mの海底に置かれているブルド-ザーは、1m離れると見えなくなる。撮影は無理と判断し、水面直下に引き上げて撮影。互いに邪魔になるので、フィリップとは交代で撮影した。
 
 
 
 
ニコノスを持つフィリップ・シュルケ
イメージ 6
彼はニコノスに見慣れないレンズを付けている。超広角レンズだ。このときは'72年6月なので、ちょうどニコノスの15mmレンズが発売される直前。まだ手に入れられないはず。もしかしたらニコンと取引があって試作品を提供されたのかもしれない。
この後彼は、日本の各地を撮影するので、助手を探しているという。ぼくにも声をかけてくれたが、休みが取れずに断念した。ぼくより5~6歳上だと思うが、今でも水中撮影機材の開発&撮影を続けているのだろうか。