大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ミゾレウツボ(?)の謎 

今回はミゾレウツボ(?)について考察したい。1985年11月、座間味島で黄色味が強いウツボを見つけて撮影した。図鑑で調べたら、ミゾレウツボが最も近かった。しかし、図鑑は標本写真なので、色合いが異なり、確信が持てないでいた。 

ミゾレウツボと思われるウツボ(座間味、85年11月)

 

それから8年後に今度は沖縄本島の瀬良垣ビーチで、ミゾレウツボらしきウツボに出会い、撮影した。 

ホンソメワケベラにクリーニングされる(沖縄本島、93年10月) 

 

 

翌年の94年に『日本産魚類生態大図鑑』(益田・小林、東海大学出版会)が出版され、ミゾレウツボが掲載された。座間味島で小野氏が撮影した写真だった。これまでぼくが撮ったものと体色・斑紋が似ているので、ミゾレウツボで間違いないと確信したのだが、解説には「水深15mで撮影されたが、本来は水深200m前後に生息」と記されていて、一抹の不安を感じたのだった。実際、『日本の海水魚』(山と渓谷社97年8月発刊)の制作中に、沖縄本島で撮った写真をミゾレウツボとして提出したが、担当魚類学者は違うと判断し、結局この図鑑にはミゾレウツボは掲載されていない。 

ミゾレウツボ(座間味、95年8月)

 

06年にも座間味で撮影したが、これまでとは少し違い、顔の部分がやや茶色い。国立科学博物館神奈川県立生命の星・地球博物館共同の魚類写真資料データベースで検索してみると、写真はたった2点しか出てこない。1点は、水深200mくらいで撮影されたもので、おそらく潜水艇によるものだろう。あまり鮮明ではない。もう1点も深海から採集された標本写真だった。ぼくが撮影した4点、そして小野氏の写真もなぜか水深15mでの撮影になる。15mにいた黄色っぽいウツボは、ミゾレウツボでよいのか、それとも別種なのだろうか。 

顔の部分がやや茶色いタイプ(座間味、06年7月)