大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

水納島の想い出(人物編)

沖縄・本部半島の沖にある小さな島が水納島。その形から、クロワッサンアイランドと呼ばれている。この島でダイビングサービスを営んでいるU夫妻は、共に沖縄の大学のダイビングクラブ出身。何度か潜らせていただいたが、今年の年賀状に通常営業は昨シーズンで終了、と書かれていた。

水納島(沖縄観光情報サイト・たびらいより)

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自分の年齢を考えると、周りの人たちも仕事を辞め、のんびり過ごす年代になったのだと、実感する。実はU君は、以前観賞魚雑誌の編集者だった。91年に出版社に入り、たまたまぼくが連載していたコラムの担当になった。数か月後には原稿を取りに来宅。2時間くらい海の話をするのが常になった。また、こちらの都合で水中撮影機材店で待ち合わせたことや、当時『ダイバー』にもコラムを連載していて、編集部で打ち合わせのとき、そこでU君と待ち合わせて原稿を渡したことも。これには訳があり、『ダイバー』の担当者はU君の後輩だったため、会わせてあげたかったのだ。魚類学会にも取材という名目でU君と行ったことがあり、2日目には奥さんのMさんを連れて来るなど、かなり自由だった。

水納島の海底は、砂地や根、サンゴ礁などさまざまな環礁が揃っている

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952月ごろ、U君は出版社を辞めることに。大学の先輩が水納島で営んでいたダイビングサービスを引き継ぐことにしたのだ。担当でなくなるのは寂しいが、沖縄に拠点ができるのは楽しみでもあった。同年5月にオープンの知らせが。ただ、本部半島の渡久地港まで行くのは大変なので、仕事で付き合いがある今帰仁のダイビングサービスで数日潜り、その後ボートで渡してもらう作戦にした。955月のことだった。U夫妻のダイビンングサービスはログハウスで、寝泊りもそこでさせてくれた。このときは様子を見るためで、確か2本しか潜っていない。2か月後の7月、再び今帰仁のサービスで潜った後に水納島へ。このときは1週間滞在し、日没ごろも潜ってかなり収穫があった。だが台風襲来で、2日間ログハウスに閉じ込められ、ログハウスはきわめて台風に弱いことを知ったのだった。

2度目に訪れたときで、向かって右端と3番目がU夫妻(957月)

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96年も今帰仁経由で行ったが、97年からはJICA国際協力事業団、現協力機構)主催のサンゴ礁保全研修が沖縄であり、水中撮影の講師を務めた関係で、終えてからタクシーで渡久地港まで向かったこともある。また翌年はジェットホイルで那覇から本部まで行った。トータルで水納島に滞在して潜ったのは6回になる。人望を集めるU夫妻には、大学の同僚や後輩が手伝い&遊びに来ることが多い。中には水中写真家を目指している若者もいた。ガイドやタンク運びなどを手伝い、時間を見つけては写真技術に磨きをかけていた。現在活躍しているK君やS君も何度か現地でお会いした。

ログハウスで集合写真(98年7月)

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U君はガイドをしているので、当然魚にも詳しい。あるときホンソメワケベラの雑種を見たと話してくれた。ホンソメの雑種など聞いたことがなかったため、信じなかったが、後に「伊豆海洋公園通信」に投稿し、028月号の表紙に掲載された。そこには、ソメワケベラとスミツキソメワケベラの交雑個体と記されていた。ぼくも港近くでスノーケリングし、雑種を見つけて撮影した。U君が撮った個体とは別で、どうやらホンソメワケベラとソメワケベラの交雑個体のようだ。同じ海域にソメワケベラ属の雑種が2個体も見つかるとは驚いたのだった。

「伊豆海洋公園通信」とソメワケベラ×ホンソメワケベラ

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