大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

オニカマスの真実

スノーケリングに夢中だった約60年前、海の情報を得るため、ダイビングの先駆者たちの海底探検記をたくさん読んだ。その中に「バラクーダはサメより恐ろしい」「バラクーダは人を襲うこともある」との文章をよく目にし、ずっと気になっていた。本当だろうか、と。

英名でカマス類は「〇〇〇バラクーダ」と種ごとの特徴がバラクーダの前に付く。カマス科は世界に21種(日本に9種)いて、最大になるのがオニカマス160cmになる。それゆえ英名は「グレートバラクーダ」なのだが、単に「バラクーダ」のときもオニカマスを指す場合がほとんど。

グレートバラクーダことオニカマス(コモド)

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分布は相模湾以南の太平洋、インド洋、大西洋で、主に熱帯・亜熱帯域に生息する。特徴は尾ビレで、後縁が波打つようにカーブしていて、不明瞭な黒斑が二つあること。オニカマスに出会ったら自分はどういう反応をするのか楽しみ(?)にしていたが、その機会はすぐには来なかった。生息数は意外に少ないためだ。初めて会ったのは94年でマレーシア・シパダンだった。襲ってくる気配はなかったので、落ち着いて撮ることができた。

オニカマス(シパダン)

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その後はパプアニューギニアPNG)のマダンでも出会ったが、なぜか砂地でじっとしていた。後から考えると、クリーニングをしてもらうためだったようだ。

砂地でじっとしていたオニカマスPNG・マダン)

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また、PNGのアロタウでも内湾の浅瀬にオニカマスがやって来た。やはりクリーニングが目当てのようだった。

浅瀬に来たオニカマスPNG・アロタウ)

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オニカマスは群れることもあるようだが、出会ったオニカマスは単独ばかり。写真集や図鑑でも群れはほとんど見ない。唯一『日本の海水魚』(山と渓谷社)に西表で撮られた群れの写真がある。沖合にいるイメージだが、わりと岸の近くでも見られる。座間味港の外側のテトラポットのところにいたのを見たことがある。ただ、警戒心が強くてきれいに撮れる距離まで寄れなかった。

これまでオニカマスには10回くらい出会っているが、襲われるどころか、気性が荒い個体にも出会っていない。もしかしたら大西洋(カリブ海)のオニカマスがサメより恐ろしいのだろうか。カリブ海では潜ったことがないので、真実を確かめてみたい気もする。

テトラポットのそばにいたオニカマス(座間味)

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