大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

頬に赤帯を持つハナダイ

ハタ科ナガハナダイ属のメラネシアン・アンティアスは全長約9cmで、フィリピンやインドネシア、マレーシア、パプアニューギニアなどに分布している。日本にはいないため、和名はない。英名は前述以外にレッドチークド・バスレットやパシフィックフェアリー・バスレットなどがある。オスの頬に赤い帯があるのが最大の特徴。一方メスはオレンジに近い黄色で、際立った模様はない。

上がメラネシアン・アンティアスのオスで下がメス(ラジャアンパット)

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最も生息数が多いのはフィリピン。といってもフィリピンは島の数がたくさんあり、どこでも多いというわけではないようだ。セブ島のリロアンでは大きな群れは見られなかった。

メラネシアン・アンティアスのオス(リロアン)

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インドネシアなどでも多いには多いが、他のハナダイ類と混泳しているケースがほとんど。パプアニューギニアでもそうだった。

キンギョハナダイと混泳する本種(コモド)

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本種は他のハナダイ類と同様、オスが複数のメスを従えるハレムを形成する。オスが支配できなくなると最も力の強いメスがオスに性転換し、ハレムを受け継ぐか新たにつくる。夕方繁殖行動を狙って観察していたら、突然激しいケンカが始まった。片方は明らかにオスだが、もう片方の頬の赤帯は薄いので、オスになりたてのようだ。ハレムの奪い合いだったのかもしれない。

オス同士の争い(リロアン)

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オスの頬にある赤帯は、やはりオスとしての威厳や存在感をアピールするためのようだ。ひときわ鮮やかな赤帯をしたオスがいたのでレンズを向けた。繁殖期になるとより鮮やかになってメスを引きつけるのだろう。

赤帯が鮮やかなオス(ラジャアンパット)

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