大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

魚の死骸を見かけないワケ

ダイビング中、魚の死骸を見た人はほとんどいないのではないだろうか。魚も病気やケガはするし、寿命もある。目につく魚はとても多いにもかかわらず、死骸はまずない。これまで見たのは約8個体。漁網にかかったり、釣り人が捨てたものは除いている。数千本潜って数個体だから、確率的には極端に少ない。死骸が見られない最大の理由は、大部分が大きな捕食魚に丸のみされてしまうからだ。
アカエソの死骸に引き寄せられたタコ(大瀬崎)

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傷ついたり病気で弱り、動きがおかしくなるとすぐに捕食魚の餌食になる。自然淘汰というやつだ。運よく捕食されなかったものの、命を落とした魚が海底に横たわり、我々ダイバーの目にとまるのだが、経過とともに臭いにつられて「掃除屋」と呼ばれる貝類、甲殻類などがやって来て食べ始める。
セミホウボウの死骸にとりついたヤドカリ(奄美

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奄美でテレビのロケで毎日同じポイントに潜っていたある日、エントリーしたらボートの下にダツの死骸があった。昨日までなかったので、新鮮(?)な死骸だ。したがって、まだ「掃除屋」はいない。もしかしたら釣り人が目的の魚ではなかったため、捨てたのかもしれない。
新鮮なダツの死骸(奄美

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柏島ではカワハギの死骸があった。死後2日くらい経っているようだが、不思議にも「掃除屋」はいなかった。「掃除屋」がつかないことは考えられないので、潮流によって何度も移動しているためだろうか。
不思議と「掃除屋」が付いていないカワハギの死骸(柏島

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昔、大瀬崎で撮った写真の中にタコが死骸を食べているのがあった。死骸はどうやらアカエソのようだ。最初の写真もアカエソだが、撮影年月も異なり、同じ個体ではない。たまたま大瀬崎では死骸と掃除屋が一緒だっただけである。こうした掃除屋があらかた食べると、最後にはバクテリアの働きで有機物に分解され、跡形もなくなってしまう。たまにしか潜らなければ、見られないはずだ。
捕食者のアカエソも死ぬと食べられてしまう(大瀬崎)

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