大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

コケギンポ科の不思議

「ステイホーム」の模範となるのがコケギンポ類。巣穴から出している顔は可愛く、マクロ撮影定番の被写体だ。コケギンポ類はサンゴ礁域では見た覚えがないので、日本の温帯域に4種くらいしかいないと思っていた。ところが『日本魚類館』(小学館)には、14属96種と記されている。日本に分布するのは1属8種。1属とはコケギンポ属で、他の13属の分布は東部太平洋と大西洋らしい。日本で一番馴染みなのはコケギンポだ。
長い皮弁が特徴のコケギンポ(土肥)

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コケギンポ類の見分け方は、眼の上にある皮弁(眼上皮弁)と後頭部の皮弁(項部皮弁)の有無、数や長さなどがポイントになるが、写真での識別は難しい。そこでだいたいの特徴を見い出し、分布も含めて判別したが、違っているかもしれない。40年前には日本のコケギンポ類はたった2~3種だったが、その後次々と発見されて8種になり、そのうち6種が固有種なのだ。トウシマコケギンポは1980年に新種記載された日本固有種。和名の由来は、和歌山県塔島で発見されたから。房総半島、伊豆大島三浦半島伊豆半島和歌山県田辺湾に分布する。
トウシマコケギンポ伊豆大島

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2010年に新種記載されたチシオコケギンポも日本固有種。眼上皮弁と背ビレ前方に目玉模様があること、千葉県の鵜原伊豆大島にしか分布しないなどの特徴から識別した。
チシオコケギンポ伊豆大島

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シズミイソコケギンポは1987年に新種記載された。千葉県から和歌山県の沿岸、および佐渡に分布する日本固有種。背ビレの前端付近に目玉模様があるのが特徴。
シズミイソコケギンポ佐渡

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前種と同じ年に新種記載された日本固有種。分布は千葉県から屋久島までの太平洋沿岸、八丈島、沖縄島。宮崎県沿岸から得られた標本は、口の中が黄色いということで判別した。
アライソコケギンポ’(八丈島

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