大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

マトウダイ 分布の謎

体の真ん中に目玉模様がある魚がいる。マトウダイ科のマトウダイで、漢字は「的鯛」。「マトダイ」といわれることもある。これまで真鶴、大瀬崎、柏島でしか出会っていないうえ、沖縄や海外では見たことがないため、日本の温帯域の固有種とさえ思っていたくらい。
的のような模様が特徴のマトウダイ(大瀬崎)

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マトウダイはフランス料理の食材でもある。なぜなのかと思い、分布を調べて驚いた。日本沿岸はもちろん、オーストラリア、ニュージーランド南アフリカ、東大西洋に広く分布しているのだ。回遊性の魚以外で太平洋と大西洋両方に分布するのは例がないと思う。
撮影中のダイバーとマトウダイ(真鶴)

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マトウダイは全長約50cmに達するが、30cmくらいのものが多い。エサは魚類で、他にエビやイカも食べる。生息水深は30mから大陸棚縁辺らしい。広く分布しているわりには出会う機会が少ないのはこうした理由からだろう。伊豆などでは水深20~30mによく出現するが、駿河湾相模湾など深い湾に囲まれているからだ。
ムチカラマツの林を移動するマトウダイ(大瀬崎)

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深海に住むマトウダイだが、かなり調査・研究されている。大きさが30cmを超えると成熟するようだ。産卵期は2~4月で、産卵場所は対馬周辺の大陸棚縁辺域とのこと。
30m付近に現れることもある(柏島

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先述したように、大西洋にも分布することでフランス料理は納得できたのだが、どうして世界に拡散したのかはまったく理解できない。分布の謎といっていいだろう。
広く分布するマトウダイ(大瀬崎)

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