古くから仏教では、死者の頭を北に向ける習わしがある。そのため、枕を北に向けて寝るのは縁起が悪いとされている。魚にはそのままズバリの「北枕」がいる。フグ科のキタマクラだ。有毒なので、食すと「北枕」になると警告の意味で付けたのだろう。全長約15cmになるようだが、見らるのは10cm前後が多い。
岩陰からレンズをのぞくキタマクラ(伊豆大島)
分布は房総半島以南の温帯域および熱帯域と図鑑には記されているが、奄美や沖縄では出会ったことがない。おそらく別種と混同されているのだろう。
エビのクリーニングを受けに来たキタマクラ(柏島)
有毒のためか外敵が少ないようで、のんびりしている。したがって撮影しやすい。毒について専門書には皮は強毒、腸や肝臓は弱毒、筋肉や卵巣は無毒とある。猛毒ではないので、食べても命を落とすほどではないらしい。
カクレエビにクリーニングを受ける(富戸)
繁殖期は初夏から夏だが、以前八丈島では4月や5月のまだ水温が低い時期から繁殖にかかわる行動が見られた。
オス同士のにらみ合い(八丈島)
繁殖期になるとオスは複数のメスを囲うハレムをつくるようで、メスを見かけると急接近して求愛する。こうした求愛をすべてのメスに行い、海底のくぼみでペア産卵するようだ。残念ながら実際には見ていないので、ぜひ観察したいと思っている。
メスに求愛する婚姻色のオス(八丈島)