大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ヒバシとノコギリ

ヨウジウオ科魚類は、二つのタイプに分けることができる。浮遊するタイプと海底を這うタイプだ。前者はオイランヨウジやヒバシヨウジ、後者はイシヨウジやオビイシヨウジなどが有名。ヒバシヨウジ属のヒバシヨウジは全長約6cmで、主にサンゴ礁域に生息する。
ヒバシヨウジ(座間味)

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オレンジ色の体に青い帯が入っていて美しい。岩穴にペアでいることが多く、他の魚をクリーニングする習性がある。新種記載されたのは1856年で、かなり古い。日本初記録は不明。
ヒバシヨウジのペア(座間味)

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ヒバシヨウジ属にもう1種、よく似たノコギリヨウジがいる。体色はやや地味で、青い帯が細いのが相違点。新種記載したのは日本の学者で、1975年のこと。それまでも生息は知られていたが、ヒバシヨウジと混同されていたらしい。当初は日本の固有種だったが、台湾やインドネシアでも生息が確認されているようだ。
イタチウオをクリーニングするノコギリヨウジ(伊豆海洋公園)

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ノコギリヨウジの習性や行動パターンはヒバシヨウジと同じ。英名はホンシュウパイプフィッシュというが、当初日本の温帯域の固有種だったことから「本州」と付けたに違いない。
ウツボをクリーニングするノコギリヨウジ(伊豆海洋公園)

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奄美でノコギリヨウジを見つけた。分布的にはヒバシヨウジかと思って撮影したが、違っていた。今年2月発刊された『奄美群島の魚類図鑑』(南日本新聞開発センター刊)には両種とも掲載されている。奄美は温帯種の南限ともいえるので、特に珍しいことではないのかもしれない。
ノコギリヨウジ(奄美

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