ニザダイ科にメガネクロハギとナミダクロハギがいる。大きさは約20cmで藻食性。主にサンゴ礁域に生息している。両種とも体の色は濃い茶色だが、目の下にある白い模様の形が異なっている。
偶然一緒になった。右がメガネクロハギ(石垣)
90年代初めごろまでは両種は同じ種だった。2タイプ存在するとされていたのだ。同じ海域に両タイプ見られたので地域変異ではなく、個体変異。細かく見ると、目の下の模様以外にも違いがある。尾ビレに入っている黄色い線の位置だ。
メガネクロハギ(座間味)
当時、体の後部や尾ビレの黄色い線の位置が違うので、同じ種ではないのではと思っていた。しばらくするとその予測は当たり、別種になった。94年発刊の『日本産魚類生態大図鑑』(東海大学出版会)にナミダクロハギという和名で初めて掲載された。2種に分かれた場合、どちらかが新種になるケースがあるが、この場合はならなかった。1931年に記載された種と同じことがわかり、日本初記録種にとどまった。
ナミダクロハギ(座間味)
2種に分かれても疑問が残った。両種の中間の個体がたまに見られるからだ。おそらく交雑種だろう。メガネクロハギが2種に分かれたように、長い年月をかけて分化していく過程の一端が見えているのかもしれない。
交雑種と思われる個体(座間味)