大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

サンゴ白化の原因はストレス!? 

このところ毎年のようにサンゴの白化現象のニュースが流れるので、高水温が続くとサンゴが白化する、というのは一般の方にも知れ渡ったようだ。これとは逆に低水温でも白化することが2017年に判明した。和歌山県田辺市で、環境省が地元ダイバーの協力を得て行ったモニタリング調査で明らかになった。 

世界的規模で発生した白化現象(98年、奄美 

 

8月9日、フジテレビのワイドショーでサンゴの白化を取り上げていた。その海とは、なんと西伊豆の田子。先月下旬あたりから白化しているという。 

取材に答える西伊豆のダイビングスタッフ(ワイドショーより)

 

水中映像を見ると、確かにサンゴは白くなっている。 

ワイドショーより 

 

サンゴが生育するうえで適した水温は、約25~28℃といわれている。しかし取材当時の田子の水温は26.7℃だった。それ以前も28℃を超える日はなかったらしい。 

取材当日の水温(ワイドショーより) 

 

ではなぜ白化したのか。地元の人の話では、このところ雨量が多いという。大雨によって淡水が流入し、塩分濃度が下がってサンゴの白化につながるというのは知られていないが、研究者の見解ではありうるとのこと。白化の原因は高水温や低水温などの環境ストレスで、淡水流入もストレスになる可能性が高い、と話していた。どの地域でも記録的大雨が降るいまの時代。サンゴも生きにくいといっていることだろう。 

環境ストレスが原因(ワイドショーより) 

 

マダラエイについて 

アカエイ科のマダラエイは、紀伊半島以南の太平洋、インド洋に分布している。体盤幅(たいばんはば)は約2mに達する。通常魚の大きさは、吻の先端から尾ビレの先までの全長だが、エイ類の場合は、背中側から見て両胸ビレの最も幅が広いところを測る、体盤幅が一般的。体が小さい割に尾が長い種がいるためと思われる。 

体盤幅約1,2mのマダラエイ(奄美

 

マダラエイの背面は灰色の地に黒いまだら模様が広がり、腹側は白に近い灰色をしている。エイ類は尾棘(びきょく)と呼ばれる有毒のトゲがあることが知られている。トゲのある場所は種によって異なり、本種を含むアカエイ科は尾の中央付近にある。 

尾の中央付近にトゲが見える(奄美) 

 

通常本種は海底で休んでいるか、海底近くを移動するのだが、オーストラリアのロードハウ島でダイビングしているとき、中層を泳いでいたので驚いた覚えがある。しかも近寄っても逃げることはなく、嫌がらずに撮影させてくれた。 

中層を泳ぐマダラエイ(ロードハウ島) 

 

そのうち着底する場所を探すかのように向きを変え、こちらに向かって来た。あわててバックしながら正面から撮影した。 

こちらに向かって来た、体盤幅約1.5mのマダラエイ(ロードハウ島) 

 

別のポイントでもマダラエイを見つけた。着底したところはホンソメワケベラのクリーニングステーションだった。すぐにホンソメワケベラが掃除を始めた。 

ロードハウ島では2個体のマダラエイに出会った。通常はなかなか出会えないので、生息数が多いのだろう。そのため中層で泳ぐ姿も目にできたのかもしれない。 

ホンソメワケバラにクリーニングされるマダラエイ(ロードハウ島) 

 

沖縄の想い出(地上編)

 今年は沖縄が本土復帰して50年ということで、沖縄関連のテレビ番組が多い。それに感化されたので、沖縄を取り上げたい。沖縄へは150回くらい行っているが、ほとんどはダイビング&水中撮影が目的。そのため通常の見物・見学はあまりしていないが…。 

2002年10月にリニューアルオープンした、「沖縄美ら海水族館」のお披露目会に出席。大水槽はもちろん、バックヤードも見せていただき、とても楽しかった。 

新しくなった美ら海水族館入口とジンベエザメが泳ぐ大水槽 

 

2003年5月初旬に、NHK沖縄のカメラマンMさんからメール。5月下旬に沖縄局内で写真展を開催するとのこと。ロケの合間に撮りだめたスナップ写真だという。ムービーカメラマンがどのような静止画を撮るのか見てみたいと思い、行くことにした。 

NHK沖縄局とロビーでの写真展 

 

夜はMさん一家や友人を交えて食事会をし、懐かしい話に花が咲いた。翌日はよい機会なので首里城や守礼の門に行った。じっくり見たことがなかったので、新たな沖縄を感じ取れたような気がした。 

守礼の門 

 

2010年3月、豪華客船の「飛鳥Ⅱ」が、南西諸島クルーズを行うとのこと。しかも座間味島に寄港するという。船好きとしては乗船したい気持ちはあったものの、金銭的および日程的な面が折り合わず、しかたなく座間味まで見に行くことにした。泊港からクイーンざまみで阿嘉島近くまで進むと、憧れの「飛鳥Ⅱ」が視界に。しかし、沖に停泊しているので、撮影しても場所までは特定できない。座間味島に上陸し、ケラマ諸島だとわかる位置を見つけた。翌朝座間味を後にし、帰京。最も短い座間味の旅だった。 

阿嘉島沖に停泊する飛鳥Ⅱ。下は飛鳥Ⅱとクイーン座間味 

 

1996年7月、新宿ペンタックスフォーラムで、大方洋二写真展「素顔の魚たちⅡ」を開催した。実は、開催期間中、NHK「生きもの地球紀行」の座間味ロケとだぶっていた。ロケの日程のほうが遅く決まった関係で、3日間は東京に戻ることで話がついていた。また、直前にトウアカクマノミのふ化とサンゴの産卵の撮影に成功していたので、ロケは3日間休みとなり、心置きなく戻れた。 

東京では会場への搬入、友人の助けも借りて設営などを行い、無事開場。夜はオープニングパーティーで盛り上がった。そして翌朝沖縄へ。那覇空港から琉球エアーコミューターの小型飛行機で慶良間空港へ。この飛行機に乗るのは、海がシケて船が欠航したときが多い。今回はシケてないうえに往復だったので、ぜいたくな気分が味わえた。 

小型飛行機から見える嘉比島(がひじま)と右は座間味島 

 

暑中お見舞い

 暑い日が続いている。昔は風鈴の音で涼をとったものだが、今ではそんなことではごまかせなくなった。日本より北に位置するヨーロッパでも猛暑が続き、死者も出ているというニュースを見ると、やはり地球はおかしくなっていることが理解できる。 

地球がおかしくなっても避難するところがないので、画像を見て涼んでいただきたい。

青い世界のナンヨウマンタ(コモド)

 

浅い砂地の海底は、波の影が写って不思議な模様の絨毯になる。透明な水も積み重なると青く見える。 

砂底に写し出された模様(モルディブ

 

大きな波は、砂底に波模様を形づくる。潮流で消えたり、新たにできたりして、毎回波模様は異なる。 

波がつくった砂の模様(奄美 

 

潜っていてふと水面を見上げると、たくさんのスノーケラーが浮かんでいた。 

水面でスノーケリングを楽しむ人々(紅海)

 

アオウミガメが泳いでいた。しかも大きなコバンザメをつけて…。 

青は涼しさを感じる色に違いないが、危険な暑さには効き目はイマイチ。冷房が効いた部屋で見ていただくことをおススメしたい。 

コバンザメをつけたアオウミガメ(座間味) 

 


 

濁りを味方に

 水中撮影で、水の濁りは大敵。ちょっと離れただけでも鮮明に撮れない。そこでどうしてもマクロレンズでの近接撮影になるが、あまりにも当たり前すぎ。濁りを逆手にとることも必要。濁りの原因は、季節的なものや大雨、潮の満ち引きなどで、緑っぽくなることが多い。自然現象でもあるので、ワイドレンズで狙って記録するのも意義がある。 

この写真は、パプアニューギニア・マダンで大雨が降り、マングローブの濁りがポイントに押し寄せてきたところ。 

帯状になった濁りが迫る(マダン)

 

インドネシア・デラワンでは、潮の動きの中でマングローブの濁りがポイントまで来て、みるみる濁ってしまった。緑っぽい水に囲まれ、なんとなく不思議な雰囲気で、浮遊物も少なかったためワイドレンズで撮影した。ニコノスVで20㎜レンズ。自然光で、絞り優先オートで撮った。 

緑っぽい水をバックにウミシダ(デラワン)

 

水面を見上げると、太陽のあたりが黄色くなっていてまるで夕方のよう。幻想的なひと時だった。 

幻想的な雰囲気(デラワン) 

 

海に出ているとき、大雨に降られることもある。ボートからエントリーすると、雨水と海水との層になっていた。雨水は海水より軽いため、覆いかぶさってすぐには混じらない。 

二層になった雨水と海水(奄美 

 

原因がよくわからない濁りもたまにある。9月で波も穏やかだったにもかかわらず、すごい濁りだった。そんなとき、ゴンズイの群れが現れた。ニコノスV+20㎜レンズを持っていて、露出を測っても反応なしの暗さ。しかたなくシャッター速度をB(バルブ)にし、1/2秒くらいでストロボ撮影した。バックは濁りの影響で緑っぽくなったが、これはこれで貴重な写真になった。 

濁りの中のゴンズイ初島) 


 

 

ガラスハゼの生態

 ハゼ科のガラスハゼは全長約3cmで、房総半島以南の太平洋、インド洋に分布している。住みかは刺胞動物のムチカラマツで、生涯そこで過ごす。ムチカラマツとは直径約1cm、長さ2~3mある1本の枝状で、海底から上方に伸びている、表面には触手が密集し、プランクトンを捕食している。ガラスハゼはペアでいることが多い。 

ムチカラマツにペアで暮らすガラスハゼ(座間味) 

 

ガラスハゼが新種記載されたのは1969年で、日本では80年代初めごろに生息確認され、和名が付けられた。体の一部が透明であることが由来と思われる。 

シルエットのガラスハゼ(座間味)

 

ガラスハゼは肉食性だが、何を食べているかは図鑑などに記されていない。おそらく、浮遊している甲殻類の幼生が近くを通ったり、ムチカラマツにたどり着いたら食べるに違いない。実際に食べている場面を見たことはあるが、何なのかはわからなかった。 

卵を守りながら何かを食べるガラスハゼ(奄美 

 

繁殖期は初夏から夏で、期間中に何度か産卵を繰り返すものと思われる。6月奄美で求愛らしい行動を観察した。オスと思われる個体がもう1尾の上に重なるしぐさを何度も行ったのだ。産卵を促す行動なのだろうが、3分間観察・撮影しても進展はなかった。 

重なる不思議な行動(奄美 

 

産卵は、ムチカラマツの触手や肉質部をはぎ取って骨格だけにし、産み付ける。その後はオスがふ化まで卵を守る。骨格だけになったムチカラマツは、回復は望めない。海の中でも、生きものが生きてゆくには、いくつかの命が犠牲になる。これが自然の摂理というものなのだろう。 

産卵中のペア(座間味) 

 

7月の海番組 

夏になると、テレビでの海番組が多くなる。そこで今月に入ってから放送された、海の番組で印象に残ったものを取り上げる。 

日本テレビ所さんの目がテン!』は、7/10(日)と7/17の2週にわたって沖縄・奄美を放送した。奄美は海と森だが、海は南部の代表的ポイントの嘉鉄(かてつ)でのロケ。水深7~8mの砂地にある根を竜宮城として紹介していた。何度も潜った場所なので、懐かしかった。 

嘉鉄の根に住むハナビラクマノミ。以前はカクレクマノミが住んでいた 

 

7/17は沖縄本島恩納村でのロケ。サンゴの産卵がメインだったが、魚類などの繁殖シーンもとらえていた。印象深かったのはトウアカクマノミで、ちょうど卵を世話しているところだった。本種の成魚の体色は白、黒、赤が普通だが、この写真の個体は黒の部分が茶色だ。生息水深が10mより浅いと黒に、深いと茶色になる傾向が強い。 

卵を世話するトウアカクマノミ 

 

毎週土曜日の午後7時からNHK Eテレでは「地球ドラマチック」が放送されている。7/16はオーストラリアのテレビ局制作の『真夏のグレートバリアリーフ サンゴ大繁殖』。生物学者や研究者、保護活動家のチームがグレートバリアリーフで活動する姿を追ったドキュメンタリー。サンゴの産卵がメインだったが、いろいろな生物の繁殖もとらえていた。ミズガメカイメンの産卵も。このカイメンの産卵はコモドで2度観察・撮影しているが、他の映像・画像で見たのは初めてだった。 

カイメンの産卵 

 

グレートバリアリーフは、この30年で半分のサンゴが消滅したという。そこで研究者たちは、自然に産卵し水面に浮かんだサンゴのパンドルを集め、海面につくったプールに入れ、受精率を上げる実験をしている。パンドル⇒胚⇒浮遊幼生になる確率を高くし、海中に戻したり、一部は人工的に育ててある程度になったら海底に固着させ、サンゴ礁を修復したいと話しいた。 

サンゴのパンドルを入れた人工のプール 

 

7/17(日)NHKダーウィンが来た!」は、『海のスペクタクル! イワシ大移動』。南アフリカの沿岸を寒流とともに大移動する、「サーディン・ラン」といわれる自然現象をとらえたもの。サーディン・ランはこれまでいろいろな番組で紹介され、出て来るイワシの捕食者も決まっているので、同じような映像になってしまうキライがある。今回の番組もフランスなどいろいろな国の共同制作になっている。 

海に飛び込んでイワシを狙うケープシロカツオドリ